2023-01-05

テーマ別主要記事目次

2024年1月17日 改訂
2023年7月18日 改訂
2023年3月31日 サイドメニュー目次作成 
2023年3月25日 改訂 
2023年1月5日 作成 


図書館関係

2023-03-02 NDLデジタルコレクションについてのあれこれ

2022-12-26 21世紀の図書館建築 欧米編 

2022-06-15 朝日新聞の書評記事に関して

2022-05-15 早坂信子『司書になった本の虫』を読む

2022-05-13 世界の図書館写真集

2021-12-01 図書館サービスの経済学のために

2021-09-16 メタファーとしての図書館

2021-03-15 「サブジェクトライブラリアンの将来像」に参加して

2019-05-14 『図書館の世界』(フランス語版)への寄稿(改訂)

2019-03-11 故金森修氏の蔵書の行方

2018-06-19 『情報リテラシーのための図書館』の書評

2018-06-05 米国大学図書館のサブジェクト・ライブラリアン

2017-11-25 『情報リテラシーのための図書館ー日本の教育制度と図書館の改革』(続報)

2017-10-22 『情報リテラシーのための図書館ー教育制度と図書館の改革』

公共図書館





2022-10-25 計量経済学的手法による図書館貸出の影響分析



学校図書館



2022-08-05 文科省の学校図書館行政の展開

2022-05-23 科研「「知の理論(TOK)」に基づく学校図書館モデル構築の研究」の成果報告

2022-05-16 「学校教育情報化推進計画(案)に関する意見募集の実施について」への意見

2022-05-02 SLIL(スリル: School Library for Inquiry Learning)について

2021-10-18 戦後学校図書館政策のマクロ分析

2021-10-12 なぜ国際バカロレアを取り上げるのか?

2021-09-23 「国際バカロレアと学校図書館」公開シンポジウム

2021-09-03 『国際バカロレア教育と学校図書館—探究学習を支援する』の刊行(10月30日発売)

2020-12-22 博士論文(「教育改革のための学校図書館」)について

2020-10-04 国際バカロレアと学校図書館との関係

2019-12-27 私見:公開シンポジウム「教育改革のための学校図書館」

2019-12-26 公開シンポジウム「教育改革のための学校図書館」の配付資料と記録

2019-06-09 「日・米・仏のカリキュラム改革史における学校図書館政策」

2019-06-03 「今後の学校図書館を導くための学習理論の考察」

2019-05-13 『教育改革のための学校図書館』(東大出版会)の刊行予告

図書館情報学


2021-11-14 IBDPの「知の理論(TOK)」「課題論文(EE)」が図書館情報学に示唆するもの

2020-03-31 言語と知識,国語教育 ー 35年にわたる大学教員生活を終えるにあたって(2)

2020-03-31 図書館情報学をおもしろがって ー 35年にわたる大学教員生活を終えるにあたって(1)

2020-03-04 『レファレンスサービスの射程と展開』の刊行

2020-01-27 三田図書館・情報学会月例会「教育と図書館との関係を考える」(改訂版)

アーカイブ


2022-09-16 『アーカイブの思想』のその後

2021-11-25 国立歴史民俗博物館企画展示「学びの歴史像ーわたりあう近代」

2021-09-04 『アーカイブの思想』の書評(3)

2021-09-04 『アーカイブの思想』の書評(2)

2021-06-03 「アーカイブ」と「アーカイブズ」は違う

2021-04-28 『アーカイブの思想』の書評

2020-12-19 『アーカイブの思想—言葉を知に変える仕組み』の表紙について

2020-12-14 新著『アーカイブの思想—言葉を知に変える仕組み』の予告

地域資料

2021-12-23 『地域資料サービスの展開』『地域資料のアーカイブ戦略』の刊行

2019-08-29 蛭田廣一著『地域資料サービスの実践』の刊行

出版関係


2022-05-24 図書館市場についてのケーススタディ

2020-10-23 子どもの本離れは解消されたのか — 飯田一史『いま、子どもの本が売れる理由』を読む

2017-10-22 「図書館での文庫本の貸出」について

読書関係

2022-07-26 石井光太『ルポ 誰が国語力を殺すのか』感想

ネット・デジタル


2022-12-08 Google Booksと同じような検索ツールは誰でもつくれる

2021-12-26 国立国会図書館デジタルコレクションの凄さ

2021-05-01 オンライン資料の納本制度の改定について(2)

2021-05-01 オンライン資料の納本制度の改定について(1)

2020-12-21 「図書館関係の権利制限規定の見直し(デジタル・ネットワーク対応)中間まとめ」についての意見

2019-03-23 【書評(根本彰)】松田政行編著・増田雅史著『Google Books裁判資料の分析とその評価:ナショナルアーカイブはどう創られるか』

2017-10-27 「書籍のナショナルアーカイブ」の研究会報告

2017-08-15 日本で刊行された書籍のGoogle Books対応について

書評


2021-03-01 情報爆発、万葉集、苦学そして日本語

2020-03-24 PISA 2018, コンピテンス, そして「翻訳」

2019-03-11 日本人の言語論的基盤を探る本

ローカル(茨城、つくば、小田)






教育問題


2018-10-04 ランドセルと教育改革(重荷を脱ぎ捨てる時だ)

その他









2023-01-04

最近読んだ本 2023年1月版

 【最近読んだ本】*執筆・研究活動以外でここ1年くらいで読んだ本を挙げて一言感想を書いておく。今年も『みすず』1/2月合併号に寄稿したが、そこに納められなかったものを中心にしている。なお、このみすず書房のPR誌は今年の8月号で休刊となり、「WEBみすず」(仮称)になるそうだ。いよいよ紙からデジタルへの動きが急にも見えるが、他方、人文書では紙版を重視することは変わっていない。以下で文献学(Philologie)関係を意識しているのはそれと関わっている。『みすず』1/2月合併の「読書アンケート特集」は今後も残すそうである。


竹田青嗣『ニーチェ入門』筑摩書房, 1994.(ちくま新書)

 竹田氏が先行思想家の考えを咀嚼して自らの言葉で分かりやすく表現してくれることは、この30年近く前の著作から一貫しているということを改めて知った。ニーチェは敬遠してきた思想家だったが、この本を読んで考えが変わった。言葉の力によって、人文主義、文献学の系譜が21世紀まで生き延び、さらに展開しつつある意味を確認させられる。


堤未果『デジタル・ファシズム:日本の資産と主権が消える』NHK出版, 2021.(NHK出版新書)

 「○○DX」が何を意味するのかを率直に語った本。とくに「第Ⅲ部 教育が狙われる」に惹かれて読み始めたが、読んでいるうちにこの本が「NHK出版」から出ていることの意味についても考えさせられた。放送(broadcating)という特権的なメディアをもち、さらに受信料獲得が放送法で保証された「公共放送」であるNHKがグローバルなデジタルネットワーク社会の到来で今後どうなるのか、強い関心をもっているはずだからである。情報インフラの利権をめぐる闘いにこの本も置かれている。


小坂井敏晶『格差という虚構』筑摩書房, 2021.(ちくま新書)

 フランス在住の論客の格差論。彼の地にいるからこそ見えることがあり言えることがある。人間が一人一人遺伝的にも、生育環境でも、社会環境でも違いがある以上、格差があることは当たり前である。だが、すべての人が現実社会に生きるために、制度的にどのように対応するのか、そのときの規範や方法はいかにあるべきなのか。


ブランコ・ミラノヴィッチ(西川美樹訳)『資本主義だけ残った:世界を制するシステムの未来』みすず書房, 2021.

 タイトル通り、グローバル資本主義を分析した本。その意味では当たり前のことを論じているが、それがきわめて実証的でかつ重厚に論じられていて説得力がある。リベラル能力資本主義(米国)vs. 政治的資本主義(中国)に対して前者を一方的に評価することをせずに冷静に見ようとするする態度は、著者が東欧出身で世界銀行でエコノミストをしていた人だからか。


木庭顕『クリティック再建のために』講談社, 2022. (講談社選書メチエ) 

 今回挙げた本ではこれが一番の難物で、何度か読み返し、読書会参加の人たちとの議論を経てようやく著者が言おうとしていることは把握できてきた。Amazonの読者評にもあるが、この本は「メチエ」シリーズの他の本の構えとまったく異なって、著者が展開してきた古代ギリシア以来の言語哲学とローマ法以来の法哲学をベースにして書かれた思想史をつなぎ合わせたものである。じゃ、元に戻って以前の著書(『政治の成立』以下の三部作+『人文主義の系譜: 方法の探究』)に当たれば理解しやすいかといえば確かにそうだが、それぞれを消化するにはかなりの知的努力が必要だ。日本の人文社会科学の極北に位置する著者の業績はたぶん半世紀くらいしないと理解されないのだろう。


佐藤彰一『歴史探究のヨーロッパ:修道制を駆逐する啓蒙主義』中央公論社, 2019.(中公新書)

 上記の木庭氏の本でも触れられている。この本は著者がヨーロッパの中世から近世への転換期をテーマとする歴史学のシリーズの一冊で、「修道制」が前面に出ているけれども、テーマとしては、人文主義(フマニタス)、文献学(ビブリオロジー)とは何かを中心的に論じている。近代の実証主義的歴史学においては、サンモール修道会のマビヨンらによって、伝わる文書や写本の真正性を明らかにする方法が確立された。だが18世紀になると啓蒙主義の台頭でフマニタスやビブリオロジーの位置付けが見えなくなっていく。


エドワード・W・サイード(村山敏勝・三宅敦子訳)『人文学と批評の使命:デモクラシーのために』岩波書店, 2013.(岩波現代文庫)

 文献学は死に絶えていないどころかデジタルヒューマニティーズによって新しい展望が与えられつつある。サイードは『オリエンタリズム』で知られるパレスチナ出身の論客であるが、この本では19世紀ゲルマンそしてフリードリッヒ・ニーチェを経由してアウエルバッハなどの20世紀の人文学につながり、そしてさらに新たな展開を示唆している。バルト、フーコーやデリダなどのアンチヒューマニスティックな人文学も文献学をルーツにしていることも述べている。


坂本尚志『バカロレア幸福論』星海社, 2021.(星海社新書)

 フランスの高校卒業資格のための試験制度バカロレアで哲学が課されることは知られているが、近年、著者らの研究によってその内実が明らかにされてきた。哲学をやると幸せになれるというのがどれだけ当てはまるのか。上の小坂井氏や木庭氏の議論などを見ていると疑問もある。同じ著者の『バカロレアの哲学:「思考の型」で自ら考え、書く』(日本実業出版社, 2022).も合わせて読み、少なくとも自分の考えを表現する方法として有効ととらえる。

2022-12-26

21世紀の図書館建築 欧米編

関連ブログ記事:世界の図書館写真集(2022年5月13日)

世界的にみて21世紀になった世紀の変わり目で新しいコンセプトの図書館建築が続いた。それはたとえば次のような図書館である。どれも最新のテクノロジーを駆使しているが、基本は資料あるいは情報を来館者にスムースに提供しその場で何らかの知的作業ができるようにということで共通している。つまり、研究室や自宅での作業では決して得られない付加価値を明確に提示するからこうした「場所としての図書館」に莫大な建築費と運営コストを惜しまないのである。

  1. フランス国立図書館フランソワ・ミッテラン館(1994)
  2. デンマーク王立図書館ブラックダイアモンド(1999)
  3. 新アレクサンドリア図書館(2001)
  4. ザクセン州立図書館兼ドレスデン工科大学図書館(2002)
  5. シアトル市立中央図書館(2004)
  6. ブランデンブルク工科大学(2004)
  7. ユトレヒト大学図書館(2004)
  8. ベルリン自由大学文献学図書館(2005)
  9. シュトゥットガルト市立中央図書館(2011)

ブラックダイアモンドの写真

次は2014年に訪ねたデンマーク王立図書館の写真(筆者撮影)である。旧い図書館と新しい図書館が同居していることからくるインパクトは大きかった。そのことは、『場所としての図書館、空間としての図書館』(学文社, 2015)に書いた。機能でも場でもない建物としての図書館の重要性を考察すべきことを教えられた。



運河に面したデンマーク王立図書館、右手が新館ブラックダイアモンド、それと繋がったレンガ造りの旧館がある






新館内部から運河を見たところ









新館の明るい閲覧室






旧館の閲覧室(きわめてオーソドックスな西洋図書館の意匠)



次に、図書館建築の歴史的展開を紹介する記事を示す。

Laura Itzkowitz

The Architectural Evolution of Libraries

The ultimate temples of knowledge, libraries have continually changed in nature over the centuries.


原記事をご覧頂きたいが、著者の許諾を得たうえで仮訳を下に示しておく。

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図書館の建築上の進化

究極の知の神殿としての図書館は世紀を超えて性質を変えてきた

ローラ・イツコヴィッツ(フリーランスライター)

図書館のない文明社会は考えられない

書物のコレクションとしての図書館とそのコレクションを収容する建物は、古代メソポタミアにさかのぼり、多かれ少なかれ文字の出現の時期と一致しています。何世紀にもわたって、図書館建築は、多くの場合、その用途、時代の建築トレンド、およびそれらを構築するために利用可能な技術に応じて、いくつかの進化を遂げてきました.

図書館は単なる本の保管庫ではなく、文化的富と知識の象徴です。図書館の建設、修復、改築は、建築家だけでなく一般の人々にとっても重要であり、それを担う権限をめぐっていくつのもの企業が競い合っています。

この記事では、歴史を通じて図書館の類型をたどり、古代アレクサンドリアからロボットが保管庫から本を取り出すノースカロライナ州ローリーのハント図書館まで、世界で最も重要な 12 の図書館に焦点を当てます。

アレクサンドリア図書館(The Royal Library of Alexandria, 3rd century BC, Alexandria, Egypt)


世界で最も重要な図書館はエジプトのアレクサンドリアにあり、今日の図書館のモデルとなっています。アレクサンドリアの図書館は大学のキャンパスのように建てられ、テキストを保管する部屋と勉強する部屋がありました。アレクサンドリア図書館は火事で破壊されました。おそらく、ジュリアス・シーザーによる攻撃を含む数回の攻撃で破壊されました。

海印寺 Haeinsa Monastery(Photo via The Telegraph)


海印寺は私たちが図書館と考えているものではありませんが、ユネスコによれば、中世以来、「世界で最も完全で正確な仏教教典のコーパス」である高麗大蔵経が所蔵されています。海印寺は、印刷機が発明される前にページを印刷するために使用さ れた木版のリポジトリです。版木は本棚のように棚に保管されており、建物は世界最大級の木造保管施設です。

マルチャーナ図書館

Library architecture (Photo Credit: felibrilu,)


Biblioteca Marciana, 1564, Venice (Photo via Zero)


ヴェネツィアの守護聖人であるサン マルコにちなんで名付けられ、サン マルコ広場にあるマルチャーナ図書館は、ルネッサンスの建築家ヤコポ・サンソヴィーノによって設計されました。イタリアで現存する最古の図書館の 1 つであり、世界で最も優れた古典文献のコレクションの 1 つを含んでいます。もともと、本は学校の机のように並んだ書見台に長い鉄の鎖で固定されていました。中世とルネサンス期には、本が盗まれないように本はしばしばこのように保管されていました.

トリニティカレッジ図書館 Trinity College Library,1732, Dublin(Photo Credit: Jeurgen Jauth)


は、トーマス・バーグの傑作であり、今でもアイルランド最大の図書館です。元々、天井はフラットで、ギャラリーには本がありませんでした。建築家のディーンとウッドワードは、1856 年に図書館の大規模な改修を完了しました。これは、図書館に法定納本の権利が与えられた後に蓄積された本を収容するためでした。つまり、アイルランド共和国で出版されたすべての本のコピーを受け取ることになりました。

ラドクリフ カメラ Radcliffe Camera, 1749, Oxford, England (Image via The English Home)


ラドクリフカメラは、イギリスで最初に建設された円形図書館です。それは医師のジョン・ラドクリフによって資金提供され、クリストファー・レン卿の弟子であるニコラス・ホースクムーアと、建設が始まる前にホークスムーアが亡くなったときに建築家として引き継いだジェームズ・ギブスによって設計されました。これは、英国のパラディオ建築の優れた例です。図書館はドームを中心としており、コリント式の列を含む古典的な詳細がいっぱいです。

アドモント修道院 Admont Library, 1776, Admont, Austria (Photo Credit: Keith Ewing)


アルプスのアドモント修道院内の図書館は、まるでおとぎ話のようです。ポルトガルのマフラ図書館に次ぐ、世界で最も長い修道院図書館の 1 つです。徹底的にロココ調のデザインで、本はもともと壁に合わせて白い革で装丁されていました。図書館は決して研究のために使用されたのではなく、修道院のコレクションを誇らしげに展示する場所として使用されました。僧侶たちは本を読むために個室に本を持ってきました。

サント・ジュヌヴィエーヴ図書館 Bibliothèque Sainte-Geneviève, 1850, Paris (Photo Credit: Paula Soler-Moya)


カルチエラタンの中心部、パンテオンのすぐ近くにあるサント・ジュヌヴィエーヴ図書館は、パリで最も壮大な図書館です。同時期に建設されたボザール様式の鉄道駅に似せて、アンリ・ラブルーストによって設計されました。建築家が鋳鉄を使い始めたのは比較的最近のことで、鋳鉄が繊細なパターンを作成できるだけでなく、重い荷重にも耐えることができることが分かってきたからです。これは、図書館だけでなく、建築術全般に貢献しました。

ニューヨーク公共図書館 New York Public Library, 1911, New York City (© Davis Brody Bond LLP, EverGreene Architectural Arts)



で最も有名な図書館の 1 つであるニューヨーク公共図書館の本館は、42 丁目と 5 番街の交差点にあり、この街の文学的伝統とボザール建築の傑作を示す場となっています。カレールとヘイスティングスによって設計されたこの建物は、完成時に米国で建設された最大の大理石の建物でした。エヴァーグリーン建築工房が、このローズ・メイン・リーディングルームの修復を担当しています。

イェール大学バイネケ貴重書・手稿図書館 Beinecke Library, Yale University, 1963, New Haven, Connecticut (Image via Dezeen)



スキッドモア、オウイングス&メリル(SOM)のゴードン・バンシャフトは、1963 年にイェール大学のモノリシックな バイネケ貴重書・手稿図書館を設計しました。バーモント州の大理石のファサードは、太陽が強いときは内部が光っているように見えますが、本を有害な光線から保護します。 SOM は、バーモント州の大理石と花崗岩、ブロンズ、ガラスを使用して、このモダニズムの傑作をつくりました。図書館の中央にある 6 階建ての照明付きのスタックに本が保管されています。

フランス国立図書館 Bibliothèque Nationale de France François Mitterrand, 1994, Paris (Photo Credit: Natalie Hegert)


1989 年、当時のフランス大統領フランソワ・ミッテランは、フランス国立図書館の一部となる新しい図書館の国際デザインコンペを発表しました。入札の結果、ドミニク・ペローによる巨大な遊歩道の四隅にある開いた本のような形をした 4 つのガラスの塔を組み込んだ記念碑的なデザインが選ばれました。ペローのデザインはモダンでミニマリスト的であり、フランス人から多くの批判を受けましたが、その後、多くの人がこの図書館のデザインを賞賛するようになりました。読書室は下に沈んだところに置かれ、木が植えられた中庭の周りに配置されています。

シアトル中央図書館 Seattle Central Library, 2004, Seattle,(Photo Credit: Andrew Smith)


Image via Divisare


オランダの建築工房OMA のレム・コールハースとアメリカの建築工房REX のジョシュア・プリンス・ラムスは、シアトルを拠点とする LMN アーキテクツと協力して、2004 年に完成したシアトル中央図書館を設計しました。講堂、会議室、ブックスパイラルとして知られるスタックシステム、4 階建ての書庫がなだらかなスロープでつながっており、コレクションの 75% がそこにあります。明るいリーディングルームは約 12,000 平方フィートで、図書館には 400 台のコンピューター端末が収容されています。建物のコンクリート、スチール、ガラスの斜めグリッド システムは、風や地震の横方向の力に耐えるように設計されています。

ノースカロライナ州立大学ハント図書館

James B. Hunt Jr. Library, 2013, NC State University, Raleigh, North Carolina (Image via Architizer)


Robot stack management (Image via Architizer)


エグゼクティブ・アーキテクトの Pearce Brinkley Cease + Lee と Snøhetta によって設計されたノースカロライナ州立大学の新しい図書館は、ロボットによって運営されています。正確には、BookBot は、図書館の 150 万冊の本を 5 分以内に取得するようにプログラムされています。図書館の常連客はガラスの壁越しに、建物の内部に隠されたスーパーコンピューターによって指示された bookBots が Robot Alley ストレージ エリアをズームする様子を見ることができます。このシステムは、オープン・スタックに必要なスペースの 9 分の 1 を使用し、勉強部屋、ラーニング コモンズ、講堂、および 3D プリンター、3D スキャナー、レーザー カッターを備えた メーカースペースとしての貴重な場を提供してくれます。

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ここで最後に紹介されているノースカロライナ大学のハント図書館のホームページとその内部を紹介したビデオを見ていただきたい。とくにビデオがこの図書館のコンセプトをいろんな人が説明していて参考になる。上の記事に、ロボットによる書庫管理が可能になって、その分空いたスペースで来館者が種々の作業ができるようになるメリットをもたらしたとある。このようにスタックを単位として移動させてアクセスする方式は開架と閉架の中間になるのだろうが、ほとんどの蔵書がこうなったときに何をもたらすのか。これはGoogle BooksやNDLデジコレのスニペット表示にも似て、今後の知のアクセスの考え方に影響を与えるものだろう。スペース vs. 情報アクセスが対立構図になるような設計思想だと問題が大きい。

それにしても「知の神殿」という図書館の比喩は西洋ではよく使われるが、日本ではめったに聞かない。これを一神教的な知的伝統がないことにつなげる議論もあるが、それほど単純な話しでもないように思う。そうした知の在り方についての深層部分の成り立ちとともに、その上に歴史的にどのように知の層が積み重なってきたのか、そしてそれを我々がどのように認識しているのかに関わる問題である。





2022-12-25

自己紹介詳細版(2022年12月25日)

【自己紹介】

職業 文筆業(歴史,教育文化方面)

場所 つくば市, 日本

紹介 つくば市小田に住んでいます。小田は関東平野の東側の壁に位置する自然豊かな里です。この地であった出来事,考えたことなどを書き連ねたいと思います。本人についての詳しい情報は、https://researchmap.jp/oda-seninにあります。


【最近の関心】

・アーカイブ(archive)に関わる歴史、思想、言語、教育、情報など

・図書館と図書館情報学の拡張

・日本の教育、教育課程

・地域アーカイブの実態(さし当たって福島、その後沖縄、北海道)

・つくば市小田の歴史的位置付けと関東内海の関係


【自著紹介(単著)】 

根本彰著 『文献世界の構造:書誌コントロール論序説』勁草書房1998.

根本彰著 『情報基盤としての図書館』 勁草書房 2002.

根本彰著 『情報基盤としての図書館・続』 勁草書房 2004.

根本彰著 『理想の図書館とは何か:知の公共性をめぐって』 ミネルヴァ書房 2011.

根本彰著『場所としての図書館・空間としての図書館:日本、アメリカ、ヨーロッパを見て歩く』学文社 2015.

根本彰著『情報リテラシーのための図書館:教育制度と図書館の改革』みすず書房 2017.

根本彰著『教育改革のための学校図書館』東京大学出版会 2019.

根本彰著『アーカイブの思想—言葉を知に変える仕組み』みすず書房 2021.


【自著紹介(共著・編著)】 

マイケル・H・ハリス著, 根本彰編訳『図書館の社会理論』青弓社, 1991.

三浦逸雄, 根本彰共著『コレクションの形成と管理』 (講座図書館の理論と実際 第2巻)雄山閣出版, 1993.

三浦逸雄監修,根本彰他編『図書館情報学の地平:50のキーワード』日本図書館協会,2005.

根本彰編『図書館情報学基礎』東京大学出版会 2013.(シリーズ図書館情報学1)

根本彰、岸田和明編『情報資源の組織化と活用』東京大学出版会 2013.(シリーズ図書館情報学2)

根本彰編『情報資源の社会制度と経営』東京大学出版会 2013.(シリーズ図書館情報学3)

石川徹也, 根本彰, 吉見俊哉編『つながる図書館・博物館・文書館:デジタル化時代の知の基盤づくりへ』東京大学出版会, 2014.

根本彰監修, 中村百合子他編『図書館情報学教育の戦後史』ミネルヴァ書房 2015. 

根本彰・齋藤泰則編『レファレンスサービスの射程と展開』日本図書館協会 2020.


【自著紹介(翻訳)】 

バーナ・L・パンジトア著, 根本彰他訳『公共図書館の運営原理』勁草書房 1993.

ウィリアム・ F・ バーゾール著, 根本彰 [ほか] 訳『電子図書館の神話』勁草書房, 1996.

アリステア・ブラック,デーブ マディマン著, 根本彰, 三浦太郎訳『コミュニティのための図書館』東京大学出版会, 2004.

リチャード・ルービン著, 根本彰訳『図書館情報学概論』東京大学出版会, 2014.

アンソニー・ティルク著, 根本彰監訳, 中田彩, 松田ユリ子訳 『国際バカロレア教育と学校図書館ー探究学習を支援する』学文社 2021.


*最近読んだ本は別の記事として独立させた。(2023年1月3日)





2022-12-08

Google Booksと同じような検索ツールは誰でもつくれる

国会図書館のデジタルコレクションの規模の大きさと性能のよさ、そして、12月21日より大規模な全文テキスト検索システムが提供されることなどに目を奪われがちですが、実はこれと同じようなものをつくることを可能にする著作権法改正が、2018年に行われていることを思いだす必要があります。この点について、議論段階は以前にブログでも紹介しましたが、肝心の法改正については触れていなかったので、改めてリンクだけ貼っておきます。



2018年5月の著作権法47条の5関係


 国会図書館のデジタルコレクションの全文テクスト検索が気になって、次の本をみていました。

 一般財団法人人文情報学研究所, 石田友梨他『人文学のためのテキストデータ構築入門: TEIガイドラインに準拠した取り組みにむけて』文学通信, 2022. 

 このなかのコラムで国会図書館の南亮一さんが、「著作権法改正でGoogle Booksのような検索サイトを作れるようになる?」(p.400-408)を書いているのに気づきました。これはたいへん参考になる情報です。 その記述によると、作れるがいくつかの要件を満たす必要があるとのこと。詳しくは当該書を見ていただくことにして、最後にまとめられている要件を引用しておきます。

・蓄積したデータの漏洩防止措置を講じること 
・サービスの適法性を担保するために、著作権法(47条の5)の解説書や解説記事の閲覧や著作権法の専門家への紹介などの取り組みを行うこと 
・検索サイトのトップページなどに連絡先を明記すること 
・表示する著作物は、インターネット上の著作物か、公表されている著作物であること 
・サムネイルやスニペット表示の分量が、検索の目的に沿った検索結果となっているかを検証できる範囲の分量に留まっていること 
・表示されている割合や制度、大きさが軽微であること 
・著作権者の利益を不当に害するような表示をしないこと 
・海賊版であることを知りながら表示をしないこと 

の9点です。これは要するに、著作権があり売られている本であってもデジタル化、テキスト化して検索システムをつくって公開することはOKだが、表示可能なのは限定的部分なのでそのような法に沿った運用をしていることが外から分かるようにしておけばよろしいということです。そうした検索システムを構築することに比べたら各段に小さな問題です。

ということで、こうした検索サービスが可能になっています。これってGoogleや国会図書館がやったことを誰でもできるようになったということですね。まあ、技術力とお金という前提的な問題はありますが。NDLのデジタルコレクションが基幹的なものであるとすれば、それをもっとローカルあるいはミクロなレベルで補うようなサービス構築は誰でも可能になっているので、ぜひ進めていきたいものです。とくに地域資料や郷土資料、主題や分野毎の全文テキスト検索ですね。また、そうしたものの構築を推進するような仕組みをどこかでつくる必要があると思います。

2022-10-25

計量経済学的手法による図書館貸出の影響分析

 図書館での資料貸出について、2017年にレビューしたあとに無視できない学術研究が出ている。まず川口康平(香港科技大商学院経済学部)と金澤匡剛(東京大学大学院経済学研究科)による英文の論文(1)とそれを図書館関係者向けに分かりやすく説明した講演(2)があり、さらに大場博幸(日本大学文理学部)が別の視点から行った研究(3)である。簡単に言えば、川口・金澤両氏の論文は図書館での貸出は書店の売り上げに影響があることを実証したというものであるが、大場氏は古書(新古書も含む)の市場を考えに入れるべきであるとして古書市場と図書館サービスの関係について研究している。(1)と(3)はそれぞれ学会誌に掲載された査読論文であり、学会レベルで正しさが主張されているということができる。(2)の講演は図書館関係者向けのものでもあるので、売り上げに影響があっても図書館がもつ他の効果を考慮して公共貸与権の導入を考えるべきではないかという提案になっている。

3. 大場博幸「図書館所蔵は古書市場に影響するか:発行 12 年後の新書の古書価格と図書館所蔵数との関係」『日本図書館情報学会誌』64(3), 2018.


金澤・川口論文の主張

論文(3)が(1)の成果を次のように要約してくれている。

 以上の結果をもとに,著者らは公共図書館によるクラウンディングアウト効果を見積もっている。その値は,Benchmark 群の売上上位 1/6 に入るタイトルならば 15%程度,Bestsellers 群ならば 43%~ 46%程度にものぼるという。もし調査期間中に図書館にサンプル書籍群が一冊も所蔵されていなければ,書籍の売上は 8%~ 13.5%上昇すると見込まれている。2016 年のベストセラーならば56.8%上昇する。公共投資によって民間の経済活動が圧迫されているわけである。これを理由に,公共貸与権の導入が提案されている。ただし,需要の多い書籍の損失を十分補填しようとすると,需要の少ない書籍には過分で適切でない額となってしまうことが懸念されている。

Benchmark 群というのは調査時点の2017 年 2 月に新刊として入手可能であった書籍のうち層化抽出されたもの300点のリストで、これは入手可能出版物のサンプル書籍群リストということになる。ここには出てきていないがNew群というリストがあり、2017 年 2 月に発行された書籍のうちランダムサンプリングされた新刊書150 点のリストである。これは最新刊の出版物である。そして、 Bestsellers 群は紀伊國屋書店における 2014 年,2015 年,2016 年のそれぞれの年間売上上位となるベストセラー150 点のリストである。この3つのリストに対して、Benchmark 群は 2017 年 4 月から3ヶ月間,New 群と Bestsellers 群は 2017 年2 月から6ヶ月間、日本全国の市区町村毎の図書館の所蔵データと書店の売上冊数のデータを取得して、分析したものである。

まずクラウンディングアウト(Crowding Out)効果とは、「政府が資金需要のために国債の大量発行、減税などで、公共事業の拡充など財政政策(政府貯蓄の減少)を行った場合、実質利子率の上昇を招いてしまい、利子率が上昇すると、投資が減ってしまうため、結果的に民間の資金調達が圧迫されてしまう現象のこと」(証券用語集)とされる。要するに政府の資金が市場に入ったときに民間経済に負の影響が現れることを言う。だから、ここでは図書館が市場にある図書を購入してそれを公共サービスに使用したときに書籍市場に負の影響を与えることを指すことになる。

上記の要約を言い換えると、一般書のなかでも売り上げ上位に入る本なら負の影響が15%程度であるが、これがベストセラーだと45%前後になると言っている。また、サンプル書籍群が一冊も所蔵されていなければ,書籍の売上は 8%~13.5%上昇し、2016 年のベストセラーならば56.8%上昇するとしている。これは無視できない大きな影響を示していることになる。ただし、サンプル書籍群とはその時点で入手可能な本のリストだから、それが所蔵されていないという仮定は、入手できない古い本だけの蔵書なら市場に影響しないと言っているに等しい。図書館は市場から書籍という財を購入してサービスをするものであるからその仮定は無意味なものである。それは調査者も意識していて、だからこそ公共貸与権のような制度の検討を要請して、市場介入の負の影響と公共サービスの正の効果との関係を検討すべきだと言っている。

その後、論文執筆者の一人川口康平氏が図書館大会で発表しているものの要約が次のものである。

・ 2017年の市区町村・月・書籍レベルの書店売上、図書館蔵書データを用いて、図書館蔵書の書店売上に対する平均的因果効果を推定した。
・ある市区町村で図書館蔵書が一冊増えると、書籍の売上は平均して毎月0.12冊ほど減る。
・その効果は人気の書籍ほど高く、上位1/6以外の書籍についてはそうした効果はほとんどない。
・図書館蔵書全体の存在による書籍の逸失売上は17.5%ほど。
・ただし、図書館蔵書が書店売上を奪うとしても、そのことが直ちに公共貸与権の必要性を導くわけではない。

ここでも図書館貸出が書店売り上げに与える影響はあると述べている。それは人気の書籍ほど高いが他の書籍ではほとんどないということと、影響があるからといって公共貸与権にすぐに結びつくわけではないと言っているところが、図書館員相手の議論で少し主張を和らげていることが分かる。また、図書館蔵書の逸失利益が17.5%というのは上の数値と一致していないので計算根拠が違うのかもしれない。

大場論文による新たな主張

大場氏は上記論文では、書店売り上げに影響を与える外部要因として図書館との関係のみをみているが、他に古書市場の存在が重要であるとして、サンプルとして2004 年の 4 月から 6 月にかけて発行された 234 点の教養新書を取り上げ,図書館における所蔵数の違いが古書価格の差と関連があるか否かを調べた。古書価格を従属変数とし、独立変数にはAmazonのランキング順位(古書の需要指数)、公共図書館の所蔵冊数などを用いて重回帰分析を行った結果、図書館所蔵数単独での価格への影響はプラスとなることが明らかになった。また所蔵も需要もともに多い書籍については価格へのマイナスの影響がある可能性も観察されたとしている。つまり、図書館所蔵数が多いと教養新書の中古市場価格は上がるが、一部、需要が多く図書館でも所蔵している書籍については図書館所蔵が中古市場価格を下げる効果があったということである。

著者はこの結果について「こうした図書館所蔵の影響をどう評価すべきだろうか。全体としてはプラスとマイナスを相殺してもなおプラスとなるのだから,過大に考えるべきではないというスタンスはありうる。一方で,タイトル間の違いを軽視すべきではなく,所蔵が無ければもっと利益を得られたはずのタイトル(古書の場合はそのようなタイトルを供給できた古書店)に対する損害を深刻に考えるべきであるというスタンスもありうる。その評価についてはさらに議論が必要だろう。」としている。また、新刊書市場と古書市場との関係についてはこの論文では取り扱っていないが、著者の予想としては、新刊書として売れる本ほど古書(新古書)の供給が増えるが需要の伸びが上回るので新刊市場が喰われる結果になる。さらに、図書館の資料提供をここに導入すると、ベストセラー類については古書価格は高騰するが図書館の資料提供は一時的な占有に過ぎない(所有できない)から、新刊書、古書、図書館利用のどれが好まれるかについては今後の研究に待つということで終わっている。

大場氏の研究姿勢は慎重であり信頼できる。とくに最後の点についてはぜひ研究を進めていただきたいと思う。ただ教養新書、それもかなり古いものをサンプルにしたのがよかったのかどうかという気はする。まず、図書館で新書や文庫のような本は10年も過ぎると廃棄対象になる可能性が高い。さらに10数年前なら教養新書は市場でも図書館でも一定の位置付けがあったが、その後、多数の出版社が新書を出して新書は廉価版書籍の代名詞となる動きのなかで教養新書も消耗品扱いされるケースが増えてきた。ただ古書市場、図書館の間でこうした変化のダイナミクスがどのように影響するかはよく分からない。日本の出版慣行でハードカバーで出たものが文庫本になるような形態の変化があるので文芸書などを取り上げにくかったのだろうが、新書は新書で変化があり扱いにくいところがあると思われる。

氏の指摘で重要なのは、図書館の資料利用が一時的占有に過ぎないことをどのようにとらえるかということがある。さらに、金澤・川口論文で主張されていたクラウディングアウトという概念は単に図書館が書籍市場に負の影響を与えるだけでなく、「図書館が消費者の余暇を奪ってしまうことによって,小売書店やブックレンタル,喫茶店や娯楽施設などにも経済的にマイナスの影響を与えるかもしれない。本研究で採りあげた古書市場もそうである。」と述べている。民間でできることを公共機関がやっているととらえる負の効果を考慮する視点が提示される。ただ川口氏が図書館サービスが経済効果だけでなく、その教育的文化的な効果も含めて評価すべきだと言っていることも含め、総合的な検討が必要だと考える。

おわりに

図書館と書店の代替性だけでなく(新)古書店との3つのセクターの代替性が問題になった。最近はメルカリのようなエンドコンシューマーどうしの売買も活発に行われている。ここに電子書籍のサブスクリプションサービスも絡むとかなり複雑な状況を呈していることになる。購入(所有)vs.借用(返却)、新本vs.中古本(借用本)、紙vs.電子、有料vs.無料、市場vs.公共サービスといった考察の軸が存在している。今後もここで紹介したような計量的な方法による実証研究をより精緻にして積み重ねることが必要であるだろう。


追記(2022年11月2日)

第70回日本図書館情報学会研究大会(10月29日〜30日, 東北学院大学)で大場博幸氏が「新刊書籍市場と古書市場と図書館所蔵の関係」の発表を行った。予稿集冊子(発表論文集)掲載の論文と別に、その場で追加データ(取次からの書店売り上げデータ)を加えた分析結果が発表され、資料が配付されている。その内容は、図書館貸出と古書店の販売価格、書店売り上げ(POSデータ)の相互関係を分析するもので、図書館の新刊書の所蔵および貸出は書店の売り上げに負の影響を与えているというものである。口頭発表であり、今後、論文としてまとめられると思われるが、今までの研究よりも実態に近い分析を行っていると考えられるのでその発表を待ちたい。

追記(2023年9月30日)

上記の口頭発表が2023年6月に論文として発表され、それについて大場氏による解説・補足が9月28日に行われた。そのことについてブログで追記した。


探究を世界知につなげる:教育学と図書館情報学のあいだ

表題の論文が5月中旬に出版されることになっている。それに参加した感想をここに残しておこう。それは今までにない学術コミュニケーションの経験であったからである。 大学を退職したあとのここ数年間で,かつてならできないような発想で新しいものをやってみようと思った。といってもまったく新しい...