2017-06-04

韓国訪問

5月25日(木)から5月28日(日)まで、仕事で韓国のテグ(大邱)とチョンジュ(全州)を訪問してきた。あちらの人々の熱い歓迎ぶりにとまどいながらも居心地のよさを感じて帰ってきた。

ここでは居心地のよさの一端を書いておこう。まず、言うまでもないがその近さである。私が最初に韓国に行ったのはたしか1980年代初頭で下関から関釜フェリーに乗って一晩かかってプサン(釜山)に着いた。それが当時一番安く外国に行く方法だった。それが今は、LCCを使うと成田からテグまで2時間で、往復12,000円で行くことができる。今でも関釜フェリーがあるのかなと思ってHPをみると同じようにあるのだが、一番安い2等客室で片道9,000円ということだ。ホテル代が倹約できると思えば安くなるとも言えるが、実際は下関まで行くのがたいへんだ。青春18キップを使うにしても1日ではとてもいけずかなり高くつく。よほどの暇がないとこの方法は選べなくなっている。気軽に行けることは心理的負担を小さくする。

2番めに、自然との共生だ。上空から見た韓国の風景は都市部以外は緑の山が続く。それも日本と違って高い山がなく、だいたい数百メートルから 1000メートルちょっとの小さな三角錐の山々が延々と続きそれが国土のかなりの割合を占めている。日本は平地だけでなく山に開発の手が延び、山が切り崩され、そこに団地が形成されたり、ゴルフ場になったりしているが、上空から見る限りあまりそうした開発の跡が見られない。もちろん、林業的な開発はあるのだろうが、きちんと植林をすることできれいな緑を保っているように見えた。

大学のキャンパス計画も実に上手に山裾の立地を利用している。私が行ったテグの大学は韓国で一番キャンパス面積が広くかつ美しい(と当の大学の人が言っていた)ところだったが、本当に山にかかる部分の広大な敷地の凹凸をうまく活かして植生と建物を配置していた。これは、全州の大学も同様であった。日本の、とくに首都圏の大学が郊外にいったん移転しながら都心回帰現象がはっきりしているのにたいして、あちらは大学の本来の教育研究機能を実現するための環境整備をうまくマネジメントに取り入れているように思われた。


啓明大学校

3番目に都市景観だ。都市部は都市計画が進み、超高層ビルやタワーマンションが林立していてきれいに見える。これは地方都市でもそうだ。おそらくは日本と比べると遅済成長の時期が遅かった分、近代化のスピードが速く、最新技術を反映させた都市計画を実現させやすかったからだろう。また、岩盤が全体に固いために高層ビルを建てやすいという建築技術上のメリットがあるからかもしれない。

その裏側では開発が及んでいない地域がまだまだあることは事実だが、そういうところは逆に昔ながらの懐かしい通りが残されている。伝統や自然を活かした都市開発というようなことをあちらの人に話すと、「隣の芝生は青い」でなんでもよく見えると笑われた。そうかもしれない。が、私の眼には、韓国の人たちが少なくとも日本の戦後の経済開発を反面教師にしてきた部分があるのではないかと思われた。


0 件のコメント:

コメントを投稿

探究を世界知につなげる:教育学と図書館情報学のあいだ

表題の論文が5月中旬に出版されることになっている。それに参加した感想をここに残しておこう。それは今までにない学術コミュニケーションの経験であったからである。 大学を退職したあとのここ数年間で,かつてならできないような発想で新しいものをやってみようと思った。といってもまったく新しい...