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慶應義塾大学文学研究科・三田図書館・情報学会共催 公開研究会
「書籍のナショナルアーカイブについて考える」
日時:2017年10月26日(木)午後6時30分〜8時30分(開場:午後6時10分)
場所:慶應義塾大学三田キャンパス 南校舎 475教室
参加:無料。事前申込み制
開催の趣旨:
2016年に、Google Books裁判がGoogle社側の勝訴をもって終了した。英語書籍の電子化とそれに対する検索サービス提供が米国著作権法におけるフェアユースの範囲にあることが法的に認定され、同社は今後とも電子書籍流通の重要な担い手であり続けることになった。他方、この間にわが国では「長尾構想」を基に著作権法を改正し、国立国会図書館に著作物のデジタルコレクションをつくることによって、その一部をインターネット公開したり全国の図書館に送信可能にしたりするための制度的基盤がつくられている。
これらの事態がもつ意味、そして今後の書籍流通あるいは図書館の在り方に与える影響について、『Google Books裁判資料の分析とその評価:ナショナルアーカイブはどう創られるか』(商事法務,
2016)の著者である松田政行弁護士をお招きして一緒に考えてみたい。
<プログラム>
司会:松本直樹(慶應義塾大学文学部准教授)
6時30分〜6時50分 講師紹介と最近の状況についてのまとめ
根本
彰(慶應義塾大学文学部教授)
6時50分〜7時50分 講演「電子書籍流通のための情報基盤—書籍のナショナルアーカイブをめぐって」松田政行氏(弁護士、森・濱田松本法律事務所シニアカウンセル)
7時50分〜8時30分 議論
================================この間の経緯、背景、考え方についてはまた報告する機会をつくるつもりだが、これを開催するきっかけは、松田政行編著・増田雅史著『Google Books裁判資料の分析とその評価:ナショナルアーカイブはどう創られるか』(商事法務, 2016)という本をたまたま手にとったことにある。この本の重要性については、『日本図書館情報学会誌』のvol.63, no.3(Sep 2017)に書評として掲載してもらったのでそちらを参照されたい。
昨夜のお話しは、その後の動きについて触れる場面もあって、今、これがリアルタイムで動いていることを肌で感じるものだった。ヒントとしては、一つは内閣府知的財産戦略推進事務局が「デジタル・アーカイブジャパン推進委員会」で検討している「デジタルアーカイブに関する取り組みについて」という報告にある。国の機関が実施しているデジタルアーカイブのプロジェクトに対して、横断的に検索をかける「ジャパンサーチ」という検索の窓口を国立国会図書館が中心になって立ち上げることが想定されている。
もう一つは、アメリカ著作権法の重要な要素としてフェアユースと言う考え方があるが、それを日本でも導入しようというもので、「権利制限規定の柔軟性」と呼ばれて現在準備中ということである。詳しくは、文化審議会著作権分科会につくられた作業部会の報告書「著作権法における権利制限規定の柔軟性が及ぼす効果と影響等について」に出ている。もしこれが実現すると、日本でもデジタル化とそれに対する検索データベースの作成が許諾なしで可能になり、Google Booksと類似のサービスが民間事業者によって実施されることもありうるということだ。
これら二つの動きは密接にリンクしている。私も、この問題に首を突っ込んでいろいろ調べてみて、最初の長尾構想(国立国会図書館がデジタル化を行い、図書館や民間の「電子出版物流通センター」がデジタルデータの提供や流通を担う分担方式)とは少し異なったかたちで国が動き始めていることに気づくようになった。しかし、10年前、Google Book Searchのときにはあんなに大騒ぎしたのに、今回は表面下で人知れず進んでいる。こうした事情の全体像を理解することがたいへんなことはあるが、もう一つはさまざまな利権がからんでいるためにマスメディアが報道を控えているのだろう。彼らも利害関係者であるからだ。
ともかく、以上のことをここに書いておくことで今後の考察のスタートとしよう。これは、これまで紙ベースで動いていたものが、デジタルネットワークに移行するという大きな転換点に私たちが今いることを示している。そして、一方でGoogle一社で書籍のデジタルアーカイブを運用することの危険性を意識するべきであるが、他方、日本でも、これが誰の手でどのようにつくられるのかということについて私たちは関心を持ち続ける必要がある。
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