2018-01-27

公開ワークショップ「 図書館はオープンガバメントに貢献できるか?」開催予定

次のイベントを開催します。無料で誰でも参加できます。 


*会場が同じ建物の1階から3階に変更になっています。(2/1)
*公式のサイトができました。同じものですが、そちらを参照してください 。http://user.keio.ac.jp/~lis_m/  (2/1)
*会場の都合で参加者の人数を先着150人までとさせていただきます。(2/11)

 

公開ワークショップ

図書館はオープンガバメントに貢献できるか?

ー行政情報提供と行政支援ー


日時:2018年3月25日(日)13時〜16時(開場12時30分)
場所:慶應義塾大学三田キャンパス第1校舎131-B教室
     https://www.keio.ac.jp/ja/maps/mita.html 
(キャンパスマップの9番の建物、3階)
参加:無料

図書館が行政資料や行政情報を提供する必要性は以前から言われているが、実施は容易ではない。とくに、ICT環境のもとでオープンガバメントあるいはオープンデータが叫ばれている今日、図書館はそれらに対応できるかどうかが問われる。また図書館界では、行政支援サービスの必要性も言われてきたところではあるが、本格的実施は一部の自治体に限られているようだ。

このワークショップでは、1980年代からこの問題に取り組んできた基調報告者が、日野市市政図書室調査や行政支援サービス調査を踏まえて、図書館における行政との関係について述べる。講演の豊田氏は静岡市御幸町図書館でのビジネス支援サービスの経験と田原市図書館での行政・議会支援サービスの経験から、図書館と行政との関係についてお話しする。コメンテータの伊藤氏は、図書館での勤務経験をもつ行政職員として、この問題をどのように考えるかについて語る。後半では、参加者の経験を持ち寄って、問題を整理し、克服するための方法を皆で考えることにする。


<プログラム>       

基調報告:根本 彰(慶應義塾大学文学部教授)

講演:豊田高広(愛知県田原市図書館長)

コメンテータ:    伊藤丈晃(東京都小平市企画政策部秘書広報課) 

               <休憩>                    

    議論  (休憩時間にご意見を書いていただきます)   

司会:松本直樹(慶應義塾大学文学部准教授)
        
  問い合わせ:anemoto@keio.jp  (根本まで)

本ワークショップは慶應義塾大学学事振興資金にて実施します。

<補足>
オープンガバメントとオープンデータ
デジタルネットワークを用いて政府機関の透明性を高め、情報やデータを市民に提供して政府機能への参加を推進する考え方である。オープンガバメントはオバマ前米国大統領が就任当初に提唱して話題になった。日本では経済産業省が音頭を取って推進しようとしたが、トランプ政権に代わってからこの用語はあまり使われなくなっている。オープンデータは、政府機関のデータに限らず、さまざまな機関がデータをネットで相互に交換できるようにする考え方であるが、とくに「官民データ活用推進基本法」(平成28年法律第103号)が制定されて、中央政府、地方公共団体が積極的に機関内のデータを公開していく方針が示されている。

参照:政府CIOポータル「オープンデータ」
https://cio.go.jp/policy-opendata 

このワークショップでは、ビッグデータ時代のための使い勝手のよい データの公開促進という立場ではなく、政府・自治体の透明性や行政の効率性を進展させ、市民の政府・自治体への情報アクセスと職員の職務情報へのアクセスを向上させるのに、図書館がもつ資料や情報・データを収集し、蓄積し、提供する機能の再評価が有効であるととらえる立場に立つ。従来から図書館は、地方行政資料を収集してきたし、近年ではボーンデジタルの行政情報を収集しているところも増えている。日野市の市政図書室や鳥取県県庁内図書室を始め、庁内に図書館機能が組み込まれているところもある。また、地方自治法で議会図書室の設置が規定され、庁内に行政資料室が設置されている自治体も少なくない。オープンガバメント、オープンデータ時代において、これらが果たす図書館的機能について考えてみたい。

 <想定している参加者>
図書館関係者:地域行政資料担当、課題解決支援担当、レファレンス担当など
自治体関係者:情報システム、広報、情報公開、行政資料室、議会事務局担当者など
それ以外:地域情報、行政情報、オープンガバメントに関心をもつ市民の方

<参考文献>
全国公共図書館協議会『公立図書館における地域資料サービスに関する実態調査報告書』2016年度
全国公共図書館協議会『公立図書館における課題解決支援サービスに関する報告書』2015年度

日本図書館協会図書館の自由に関する調査委員会編 『情報公開制度と図書館の自由』 (図書館と自由 第8集) 日本図書館協会, 1987.

片山善博・糸賀雅児『地方自治と図書館:「知の地域づくり」を地方再生の切り札に』勁草書房, 2016.

根本彰『続・情報基盤としての図書館』勁草書房, 2004
根本彰「政府情報の提供体制と図書館:その法的根拠の検討」 『図書館研究シリーズ』 no.37, 2002. p.1-33.
三多摩郷土資料研究会編 『地域資料入門』 日本図書館協会, 1999. (共著)

豊田高広「成熟期にして転換期 : 田原市図書館の実践」『図書館界』vol. 64, no.3, 2012,
p. 206-211
竹内比呂也, 豊田高広, 平野雅彦著『図書館はまちの真ん中-静岡市立御幸町図書館の挑戦』 勁草書房 2007
豊田高広「私の「図書館経営学」事始」『現代の図書館』 vol.39, no.2, 2001, p.78-82
   

                          

2018-01-14

新土浦市立図書館に行ってみる

昨年12月に開館したのは知っていたがまだ訪れていなかった新土浦市立図書館に行ってみた。アルカス土浦という名前の複合ビルの中心的施設で、土浦駅前の空洞化現象に対する活性化策としてつくられた。

最近のこうした事例では指定管理制度を採用する自治体も増えているのだが、ここはそうせずに、直営の図書館として開館した。そのあたりの覚悟のほどと、どの程度のできばえかを確認しに行ったのだ。

結論から言うと、けっこういいのかもというところだ。日曜日の午前中であったが、すでにかなりの利用者が来ていた。家族連れも多い。車で行ったのだが、駐車場が同じビルにあって2時間までは無料で駐車できる。駐車券のチェックしてもらう際に前にいた家族連れが2時間でなくもっと長くしてほしい、2時間なんてあっという間に過ぎてしまうからと職員に話していた。駅ビルの駐車場の台数はそれほどなく、あとはちょっと歩くことになるが駅の東西の市営駐車場に入れればもっと長く停められるらしい。

施設は5200㎡あるということで、3層の館内も吹き抜けをつくってゆったりした感じとなっていた。入った階(2階)が雑誌と児童コーナー、その上がメインの書架と閲覧席があるところであり、一番上の階はロフトと呼ばれる自由に使えるスペースと自習室がある。こういう施設が、ある程度自習に対応せざるをえないことは確かで、予約制の自習スペースもかなりとってあった。

この図書館の特徴はあくまでも図書館の基本に徹することだと理解した。要するに資料提供機能である。資料の最大収容冊数は全自動書庫も含めて56万冊という。この図書館は歴史があって資料の蓄積がある。とくに4階のメインのフロアにはこの図書館の基本資料20万冊近くが並んでいるし、雑誌のタイトル数もかなり多い。地域資料のコーナーをじっくり見たが、歴史的な資料を中心に、以前だったら書架にしまわれていたものが開架で自由に手に取れるようになっている。600席ある座席数も魅力の一つだ。

全体に新しい本が多いので、自分の関心がある書架を見るのが楽しい。この規模の図書館の書架をざっとながめると、何か新しい発見があるのはうれしいものだ。今日もみているうちに、これは使えるというアイディアが浮かんできて、メモをとった。

資料提供は単に資料を並べて利用できるというだけでは完結しない。その中身とそれをどのように見せるのかが重要だ。ちょうど、児童コーナーにあるミニシアターで子どものための読み聞かせや紙芝居、お話し会が開かれようとしていた。けっこう親子づれが入っていて待っていた。

実は先日、10年ぶりくらいにつくば市立中央図書館に行った。いつも近くのつくば駅に出入りしているのに、わざわざ図書館に行きたいという気にはならない。しかし今度できた土浦市立ならまた行ってみたいと思う。なぜかというと、空間の広さと資料の多さにほかならない。たぶん土浦はつくばの2倍以上の広さと資料数があるだろう。もちろん筑波大学中央図書館と比べたら少ないのだが、そもそも大学図書館と公共図書館のコレクションはカバー範囲が違うし、それ以上に、大きすぎる蔵書は一望することができない。知の遠近法が働くためのちょうどいい大きさがあるのだろう。その意味で、ここは知的好奇心を掻き立てるものがある。それが継続的に更新されながら維持されることが必要だ。

新土浦市立図書館の館長は公募で選考されて着任した人で、もともとは大手広告会社に勤めていたという。今の図書館はどこも居心地の良さをもたらす環境づくりを重視している。ここもその意味で空間作りと対人サービスを重視しているのだろう。今のところ、基本的なサービス体制は提供されていると思う。今後は、これをベースにいかに展開して、単に市民の憩いの場にとどまらない、直営図書館ならではのサービスができるかだろう。展示企画、講演会、地域資料、デジタルアーカイブ等のこの地域特有のものをうまく表現できるといい。また、市民の課題解決支援サービスも次のテーマになる。

土浦駅とペデストリアンデッキでつながれけっこう人の行き来があるように見えた。今のうちは、物珍しさと使い勝手の良さで来館してくれる。しかし、地方都市でここにわざわざ来たいと思わせる要因が何なのかを見きわめる必要があるだろう。


市川沙央『ハンチバック』と読書のバリアフリー

ふだん小説はほとんど読まない。そんな私が 最近,市川沙央 『ハンチバック』 という本を読んだ。芥川賞受賞作を受賞後1年以内に購入して読むことなど初めての体験だ。それというのも,この本が身体障害者の読書バリアフリーを一つのテーマにしているという声がさまざまなところから聞こえてきたか...