SLILという研究グループが立ち上がっていて、私はその顧問ということになっているので、この場で少し説明させていただきたい。まずSLILという不思議な名称はSchool Library for Inquiry Learningの略称である。あえて日本語に訳すと「探究学習のための学校図書館」となる。このグループのメンバーは昨年11月23日「国際バカロレアと学校図書館」の公開シンポジウムの運営に関わったメンバーである。メンバーの自己紹介がアップされているので参照していただきたい。
学校図書館の役割が読書資料の提供という従来型のものにとどまらず、教育課程に直接関わることが重要であることは常々多くの関係者が述べていることである。しかしながら、それがどのように実現されるのかと考えてると困難な面が多かった。そうなった理由として、司書教諭と学校司書という法的な資格の問題、養成課程の問題、教育職と事務職の関係の問題、正規職員と非正規職員の問題など人的な側面が語られることが多い。だが、別の立場からすればそれは逆で教育課程に関わらない仕事は学校のなかでは重視されないということになる。このあたりの政策論については、近々、論文を学会誌に掲載予定であり、出たらまた報告したい。
だから、図書館の仕事のどの部分が教育課程に関わるのかの見極めが重要である。それもこの数年が重要だと思う。なぜなら、次の学習指導要領改訂を睨むときに今こういうことができるという実績を上げることが大事だからだ。こういう問題意識のもとで、ここ何年か国際バカロレアという学校図書館を教育課程に組み込んだカリキュラムのことに取り組んだ。それについては、別の記事を参照していただきたい(2021-09-03, 2021-09-23, 2021-10-12)。去年の11月23日開催のシンポジウムの報告や科研の報告をしなくてはならないと思いながらできていないのでこれから行うことにしたい。
ここではこのシンポジウム開催を元にして始まったSLILの研究会が、学校図書館や教育現場の方も含めて、探究学習とは何か、学校図書館はどのように関われるのかについて議論の場にすることについて紹介してみたい。探究学習そのものが新しい学習指導要領では重視されているがその理解は人によってさまざまであり、学習者主体の学習ということでの共通理解はあってもそれ以上は、協同学習に重きを置く人、ディスカッションや発表に重きを置く人、教室外の学びに重きを置く人などいろんな方法がある。そのなかで学校図書館を学びの場にする探究学習とは何をすることなのかについて、本格的に研究してみようというものである。
5月22日に予定している第一回のワークショップは、シンポジウムでも講演者として登場したダッタ・シャミ岡山理科大学教授をファシリテータとしてオンラインで開催する。ダッタ先生は日本の国際バカロレア教育自体において主導的な役割を果たしている方であり、日本国際バカロレア学会副会長をお務めである。インドの出身と伺っているが日本語も堪能な方である。日本の学校の事情にも通じたこの方から国際水準で進められている探究学習の方法を伺い、参加者が互いに経験と意見を交換しながら日本の学校図書館の場で探究学習の推進に貢献することについて議論できれば目的を達成することになる。いろいろと言われていてもなかなか進められない探究学習についての疑問を出し合い、いいアイディアの交換につながることを期待している。
そしてそういうやりとりが学校図書館の新しい側面を引き出し、ノウハウの蓄積が行われ、それが学校図書館の評価の向上に結びつくだろう。蓄積されたノウハウは研究によって抽出されて学校図書館員養成に反映され、それが次の政策的課題につながる。こうした循環を望んでいる。スタッフで議論したときに、参加者は別に学校図書館関係者に限らず、教員、そして大学生でも、あるいは中学生、高校生でもいいのではないかとした。皆さんのまわりで探究学習に熱心に取り組んでいる生徒さんがいれば声をかけていただきたい。この場に学習者の生の声が反映されれば大いに刺激になるだろう。
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