公園と図書館
去る10月24日に横浜のパシフィコ横浜で開かれた図書館総合展でのARGのイベント「図書館×公園」でもっと考えたいことに出るために横浜に向かう途中に,池袋から東武東上線に乗って上板橋駅近くの板橋区立中央図書館に立ち寄った。ここが,最近できた,公園に面した図書館と聞いたからである。
駅から数分で公園に近づくとわあわあというたくさんの子どもたちの声が聞こえるのが新鮮だった。田舎暮らしの身では久しく体験できなかったものである。天気も上々で広い公園で遠足にでも来たのだろう,小学校中学年くらいの子どもたちが百人以上も元気に遊んでいた。近くの幼稚園か保育所の子どもたちも遊んでいる。(子どもを「元気に遊んでいる」と記述するのはステレオタイプかとも思うが,そのように表現せざるをえないような情景だった。)
講演の一角に図書館が建っていた。これも今風の建築でなかなかスマートで気持ちがいい。公園から図書館にすぐ入れて,中に入ると1階は公園側に張り出していて,ガラス越しにすぐ前から芝生が見え自然に公園につながる。
公園と図書館との組み合わせは確かにこういう部分で相性がいい。誰も拒まず何をやっていてもいい空間が連続的につながる。午後に対談したぎふメディアコスモスの吉成信夫氏が言う「図書館は屋根のある公園」という表現も自然に納得させられる。
ただ,この図書館はメディアコスモスのようなワンフロアで広い空間が拡がるようなつくりではなくて,上に積み上がっている。1階には児童コーナーやおはなしの部屋以外に外国の絵本が揃っている「いたばしボローニャ絵本館」がある。
ボローニャは子どもの本の見本市が開かれるところで,そこから寄贈されたということである。また,1階の公園に面するところにはカフェがあるのはお定まりの構えとも言えるが,妙に嵌まっている。
2階と3階は大人向けの図書館スペースである。ここで目を引いたのは「インデックスコーナー」と天井からの吊りボードに書いてあるところである。図書館でインデックスと言えば「索引」のことだがと思って行ってもそれらしきものはない。そこのスタッフに聞いてみると,資料展示をしているところだと言う。どうもよく理解できないままに行ってみると,秋の食シーズンにちなんだ展示をしているということで,野菜や食品の見本品の展示があり,関連した本が置かれてあった。それにしても「インデックス」という言葉は何に由来するのだろうか。
区政資料コーナー
さて,3階だが,ここには地域行政資料のコーナーがあった。そこで,あまり見たことのない資料を見つけたのでここで報告しておきたい。それは,区政資料のところにあったもので,区役所の会議資料のリストと,会議資料の現物がファイルされたフォルダが並んでいる一画である。次の写真がそれである。写真の上の段の左側にあるフォルダには次のような会議リストがあった。これは一部で,全部で106の会議がリスト化されている。番号は会議リストの番号と対応している。そして,会議名,設置の法的根拠,主管課,問い合わせ先,年間開催予定回数(開催時期)の情報が書かれている。
さらに下の段からずっと番号がついたファイルフォルダが並んでいる。フォルダには会議資料が綴じられているが,何もないものもあり,これは今年度の会議がまだ開催されていないものを指すらしい。フォルダのトップには,先ほどの会議毎に,資料名称,公表開始日,そして閲覧場所(区政資料室,図書館,主管課)というリストがある。閲覧場所は○がついているところで閲覧できるという意味らしい。
公立図書館で,区役所の会議全体を把握し,その資料を収集しているという例を聞いたことがなかったので,さっそく,そこのレファレンスでどういう性格のものなのか尋ねてみた。いろいろと館内職員のあいだで確認していたが,結局のところは分からないということだった。要するにここは指定管理で運営しているのだが,(分担は不明だが)区の職員も運営に参加しており,この資料についてはその職員に聞かないと分からないということだった。
後日,その職員から連絡があって話して分かったことは,この資料はかなり前からこのようなかたちで図書館で収集し,リストも図書館で作成しているということである。ただし,1年過ぎたら廃棄することになっており,保存資料にはなっていないらしい。こうした活動がどのような経緯で始まったのか,資料収集にあたってどのような連絡や広報をしているのか,作成部局は協力的なのか,保存は原部門でするのだろうが,なぜ図書館でしていないのか,公文書公開制度との関係などの疑問をぶつけたかったが,電話でのやりとりだったので,後日,調査することにした。
ということで,横浜に行く前の回り道だったが,大いなる収穫があった。最近,関西を中心に行政資料や行政情報に対する関心が高まっているように見える。前のブログでも触れたカレントアウェアネス(No.357)の竹田芳則「自治体発行オンライン資料の収集:近年の公立図書館の取り組みを中心に」の記事などである。オープンガバメントに向けての動きとして,図書館としてこういう実践もあるのだということをここに記録しておきたい。
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