新しい本が出ました。蛭田廣一さん編の地域資料に関する2冊の論集です。前に書評した同氏著『地域資料サービスの実践』の続編で、2冊でデジタルも含めた地域資料実践の全体像が把握できます。このなかの2冊めの最後の第7章「図書館の地域アーカイブ活動のために」を書きました。
個人的には2冊めのタイトルが「アーカイブ戦略」となっているのが気に入りました。デジタルアーカイブ戦略ではないのですね。デジタル戦略はその前のアーカイブ戦略がなければ立てられないことは明白です。しかし、デジタルがいろんなものを動かしていることも事実で、そのあたりの戦略論は山崎博樹さんの第1章を読むといいと思います。
JLAのHPからとりましたが、著者名を補っています。なぜ、こういう目次に著者名がないのか。誰が書いているのかは大事な情報でしょうに。このあたりに公務員職場特有の職務著作と個人著作の区別がはっきりしていない体質が現れています。専門職は自分の責任で仕事をすべきだからその範囲でどんどん書くべきなのにと思います。目録規則の「責任表示」という概念は個々の章にも適用すべでは?
『地域資料サービスの展開』(JLA図書館実践シリーズ 45)
著者・編者:蛭田廣一編
発行:日本図書館協会
発行年:2021.12
判型:B6判
頁数:240p
ISBN:978-4-8204-2110-8 本体価格:1,900円
内容:2019年に刊行された『地域資料サービスの実践』(JLA図書館実践シリーズ41)をさらに進めるため,同書の著者がさらに踏み込んで2冊の書を編みました。そのうちの1冊が,各図書館等の実践事例を集めた本書です。いずれもそれぞれの地域特有の資料を丁寧に掘り起こし,保存・提供しようとする強い意気込みを感じることができます。地域資料への熱い思いをいだく図書館員の実践と経験が豊富に紹介された書籍です。
【目次】
1章 置戸町図書館の資料とデジタルアーカイブ(今西輝代教)
2章 調布市立中央図書館の組織化とサービス(海老澤昌子、武藤加奈子、越路ひろの)
3章 地域と紡ぐ地域資料-桑名市立中央図書館の地域資料サービス(松永悦子)
4章 モノと資料から考える今と未来-瀬戸内市の地域資料サービス(嶋田学)
5章 都城市立図書館の移転と貴重な未整理資料(藤山由香利)
6章 秋田県立図書館の120年とこれから(成田亮子)
7章 岡山県立図書館の魅力発信と「デジタル岡山大百科」(神田尚美、隈元恒、佐藤賢二)
8章 沖縄県立図書館の取り組みと移民のルーツ調査支援(大森文子、原裕昭)
『地域資料のアーカイブ戦略』(JLA図書館実践シリーズ 46)
著者・編者:蛭田廣一編
発行:日本図書館協会
発行年:2021.12
判型:B6判
頁数:160p
ISBN:978-4-8204-2111-5 本体価格:1,700円
内容:2019年に刊行された『地域資料サービスの実践』(JLA図書館実践シリーズ41)をさらに進めるため,同書の著者がさらに踏み込んで2冊の書を編みました。そのうちの1冊が,地域資料の収集・保存だけでなくデジタルアーカイブとして市民に広く公開する実践事例を集めた本書です。いずれもそれぞれの地域特有の資料を丁寧に掘り起こし,保存・提供しようとする強い意気込みを感じることができます。地域資料への熱い思いをいだく図書館員の実践と経験が豊富に紹介された書籍です。
1章 地域資料とデジタル化(山崎博樹)
2章 地域住民と協働したデジタルアーカイブ(西口光夫、青木みどり)
3章 学校教材としての地域資料のデジタル化(新谷良文)
4章 地域資料のオープンデータ化と活用(澤谷晃子)
5章 デジタルアーカイブ福井の展開(長野栄俊)
6章 民間資料の保存をめぐる現状と課題-多摩地域を中心に(宮間純一)
7章 図書館の地域アーカイブ活動のために(根本彰)