『情報リテラシーのための図書館ー日本の教育制度と図書館の改革』(みすず書房)が刊行される。11月24日に見本刷りが出て、本日入手した。左はたぶんネットで最初に公開する表紙の写真である。
12月1日発行となっていて、店頭には12月2日頃に並ぶ予定だ。すでにamazonでも予告されている。TRCの新刊急行ベルにも入っていると聞いた。
本書は私がこれまで出してきた図書館情報学本あるいは図書館本と共通のテーマを持ちながらも違っている点がいくつかある。
第1に、タイトルに情報リテラシーを掲げている点である。関係者には周知のように、日本で使われる情報リテラシーは国際的な用語としてのinformation literacyとかなり違っている。日本的な情報リテラシー理解は、ICTのシステム操作スキルを中心にとらえているのに対して、国際的な理解では情報コンテンツへのアクセスを中心にとらえるものである。この本は国際的な理解を積極的に採用し、それに基づいて情報リテラシーを論じている。国際的な理解はもともとACRLというアメリカの大学図書館関係団体での議論が中心だったものである。それ自体が現在揺れているところはあり、両者の理解は相互に近づいていてメディア情報リテラシーと呼ばれることもある。また、近年、市民リテラシーとか高次リテラシーなどと呼ばれるようになっているあたりの事情についても触れた。
第2に、情報コンテンツへのアクセスを教育改革の課題と関わらせて論じたことである。これは2020年の大学入試改革や学習指導要領改訂の課題と密接に関わっている。それは大きく言えば、学校教育における「知の解放」である。東アジア的な「習得型学習」「詰め込み教育」は学力向上あるいは学力保持の決め手と考えている人もまだいるが、文科省も含めてすでに舵は切られていて、新しいタイプの学習方法を取り入れそれを評価する方向に進み始めている。その際に、情報コンテンツを自在に使いこなす学習者の育成が重要なテーマとなる。こうした教育改革の課題自体を論じている。
第3に、実はこの教育改革が、戦後改革どころか明治維新に遡ってとらえるべき歴史的改革でもあることを論じている。本書の第4章では歴史的に遡り、江戸期の教育がきわめて自由奔放で効果的であったことを取り上げた。第5章では、それが明治以降の「上からの近代化」を国是としたことで、教育の目的も方法も限定され、情報コンテンツへのアクセスが著しく制限されたことを述べている。図書館の整備よりも学校教育が優先されてきたことを批判的にとらえる視点を強調している。
第4に、図書館改革については職員問題を中心に論じている。戦後改革において図書館の位置づけが中途半端だったことにより、司書も司書教諭も専門職としてきわめて不完全なままに大学での養成が行われてきた。さらに、近年、学校司書という新しい資格が加わることになった。教育改革における「知の解放」の決め手が情報リテラシーにあるとしたら、それを推進できる専門的なライブラリアンの存在は欠かせない。そのことを6章、7章で論じた。
以上のことをご理解いただくために本書の本文の一部をここに示すことにしたい。
お見せするのは、次の項目からなる「本文見本」である。
「はじめに」
「目次」
「引用/参照文献一覧」
「索引」
根本彰『情報リテラシーのための図書館ー日本の教育制度と図書館の改革』(みすず書房 2017年12月刊)
どうぞ手にとってご覧いただければ幸いである。