最近、匂いに敏感になっている。職場の部屋が3階にあり、季節によってどうも煙臭い感じが漂っている感じがするのだが、同僚に聞くと特に感じないという。とくに冬の時期に感じていて、外を歩いていても感じるときがある。車の排気ガス、あるいは焚火の煙などのような気もしたが、まあ、気のせいだということにしていた。
ある日、屋外のその建物の側に喫煙コーナーがあり、そこで継続的にタバコを吸っている人がいるのが原因ではないかと気づいた。その場所と部屋は高さも違うし、通路が一直線にあってかなり離れているのでつなげて考えていなかったのだが、ちょうど3階に通気口があり、風向き等によってはそこから吸引された煙が廊下を伝わって入ってくるのではないかと思ったのだ。真相は不明だが、嗅覚が異常に敏感になっているのは確かなようだ。
一方、季節季節に街を歩きながら花の芳しい香りを楽しみにしている。初春の梅から始まって、沈丁花、白檀、バラ、クチナシ、金木犀、山茶花といったものである。しかしなかには、これはどうもというのもあり、代表的なものはクリとかスダジイの花が発する匂いだろう。
今の季節にどうも好きになれない匂いがある。それが白い花を可憐に咲かせるジャスミンだ。ジャスミンは香水にも使われているくらいだから一般にはよい香りとされるのだろうし、私自身もよい香りと感じるときもある。だが、どうにも動物の糞が腐敗しているような匂いと感じられることが多い。
前からこの匂いがする場所があり、まさかあの瀟洒な家の門側の生け垣の白い花から来るものではないだろうと思って鼻を近づけるとまさにこれだった。たぶん、芳香を放つものとして植えられているのだろうから、やはり私の嗅覚が人と違うのだろう。
調べてみると、ジャスミンに含まれる成分にスカトールという物質があり、これがその匂いの元らしい。スカトールはスカトロジーという言葉と共通の語素をもつ。だが、低濃度だと芳香と感じられるということだ。香りあるいは匂いが物質を介して嗅覚に何らかの生理的刺激を与えるものだとすれば、それを快ととるか不快ととるかはほんの僅かな差でしかなく、容易に逆転もしうることを示しているのかもしれない。
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