2020-02-11

iPad Mini+キーボード(携帯用の文字入力機・続編)

この記事は2019年4月20日のブログから継続している。

今の学生はスマートフォンで配布された教材を読み、また、入力もスマホですませる。しかしこの歳になると小さな字を読むことがつらくて、とてもスマホを文字入力の機械として使うことはかなわない。前から、通勤途上で使う軽くて入力しやすい端末機を試すことが課題であった。

紆余曲折の後、昨年の4月にはポメラDM200という文字入力機で再度、落ち着こうとしていたことは報告した。ポメラは文字入力に特化した携帯機器で確かに小さくて軽く持ち運びがしやすいし、何より、開くととすぐに入力を始められる簡便性がよかった。ATOKが搭載されていて文字入力も快適である。けれども問題はそこで入力したテクストをPCに取り込んで使うための連携性である。PomeraSyncというファイルを同期するためのソフトやBlueToothやWifiで送信することがうたい文句になっていた。

しかしながら、使えない。入力してから同期するために一手間も二手間も必要になる。この機器は文字入力専用機であるから価値があるというファンが多い。ネットに接続されているとすぐにネット検索をするのに気が散るというのだが、私にとってはネット接続は必要であり、また、ファイルが他のPC等とすぐに同期することが重要なのだ。

実は、ハードウェアの進歩ばかりに気をとられているうちに、ネットワーク技術が飛躍的に進展していたことにあまり気づかないでいた。このあたりについて詳しく書く必要はないだろう。要するに、PC、タブレット、スマホを結びつけるクラウド型ネットワーク技術によって、ファイルの同期や文字入力環境が飛躍的に向上していたことを知らないでいたのである。

昨年春に、iPad Miniを購入した。これは8インチ弱で重量300gの小さな筐体だが一通りのタブレット機能をもっている。タブレットとは小さなPCであり、入力こそ画面上のインターフェースによるが、それ以外はMacに準じる働きをするというものだ。これを試してみようと思った。ただし、最初はポメラに置き換えて使うつもりはなかった。何よりもキーボードがないから文字入力には不利だと考えていた。また、以前からタブレットとキーボードを組み合わせるやり方があることは知っていたが、立てると不安定で膝の上での安定した入力には向かないと思っていた。

だが、導入してみてまずiCloudでファイルを同期できることに気づいた。これが最初の設定を行えばかなり楽なのである。Macが自宅と研究室にあるのだが、ファイルをクラウド上にフォルダ構造をつくりファイルを読み書きすればそれがそのままどちらからでも読み書きして修正できる。これは2011年からサービスが始まっていたらしいのだが、そういう使い方はしておらず、USBでファイルを持ち歩いていた。何よりも自分のファイルをネット上に置いておくということの不安が先立って積極的にやろうと思わなかった。しかし、考えてみればUSBという物理的なファイルもなくしたり、破損したりという危険性と隣り合わせであり、どちらがいいと一概に言えないところがあったことも自覚していた。

この際ということで自宅のMacを最新のものに入れ替えたついでに、iCloudを全面的に導入したところ、これが使いやすい。現在ではUSBによるファイルの持ち歩きはやめてiCloud上のものを読み書きしている。さらに、カレンダーとメモもiCloudを使い始めた。カレンダーについてはずっと手書きの手帳を使ってきたのだが、2019年にはiCloudと手書きのものを併用し、2020年から手書きをやめた。これもどこかから入力したらそれがすぐに反映されるので便利だ。ただし、スマホについてはAndroidを使っているので連携に問題があった。AndroidでiCloud上のカレンダーを読み書きできるソフト(SmoothSync)を導入していたが、今はGoogleCloud上のカレンダーに切り替えている。これはGoogleの方がカレンダーとリマインダーなどを一つのアプリ上で実現しているので使いやすいからだ。メモは、iCloudのものを使っている。これはシンプルで使いやすく気に入っているからだ。Androidでメモを使うことは諦めている。

さて、いよいよiPad Miniの話しだ。教材提示など仕事上の必要から買ったのだが、同時にプライベートも含めた入力端末として使えるかどうかが問題だ。そこで、キーボードとの組み合わせを再度検討してみたところ、思った以上にいろんなタイプがあるし、価格が下がっていることに気づいた。そして購入したのが、Mini本体を差し込んで二つ折りにすればPCのように使えるキーボードである。ただ物理的に差し込むところがミソで、きわめてシンプルな仕組みだ。キーボードの重さは220g程度で、Miniと合わせると500g少しになる。これは現在キーボードを使える機器の最小重量だろう。Miniの方が重いから開くと不安定になるかと思ったが、そうなるぎりぎりのところ(確か130°)までしか開かず、絶妙なバランスで設計されている。
Arteck超薄型Bluetoothキーボード

この写真はAmazonにある商品写真であるが、ほぼこれと同じように使えている。これを見ると小型PCに見えるが、確かに使い勝手はPCそのものだ。Miniそのもののサイズが小さいから、キートップが小さいことはやむをえないが、それほど違和感なく使えている。通常は二つ折りにしていてそのまま鞄に入れておき、出して開きMiniのボタンを押すとすぐに使える。キーボードとMiniの接続はBluetoothによる。たまにその同期が悪かったりすることがあるし、また、キー入力に関して何かののタイミングで入力されずにやり直すことがあるが、まあ使えるレベルかと思う。

ということで、ここ数ヶ月はこの機器を持ち運びして入力に使用している。なによりも軽さと、開くとすぐ使える使い勝手のよさがある。手帳替わりにメモやカレンダーを使えるし、iPadとして使うときには横向きで立てることができるから、ネット検索や映像・音楽の視聴も問題ない。PDFファイルの文書にタッチペンを使って添削するというような場合はキーボードをはずして使う。当面これで行けそうだが、このブログを前から読んでいる人は、この筆者は移り気だからまた他のものに移るだろうと予測するかもしれない(笑)。

私の執筆活動は最初の卒論、修論までは手書きだったが、1980年代になるとすでにワードプロセッサの時代になって以来、いろんなハード・ソフトを試してきた。移動用の機器の快適さを求めるなどは当初望めなかった贅沢な話しではある。ただ、最近は、そうしたテクノロジーの問題以前のことに関心が移っている。それは、日本語入力に漢字かな変換がある限り、欧米のアルファベットのブラインドタッチは望めないわけで、それが日本語の入力に大きな影響を与えているということが一点。それから、そのことは日本語が漢字とかなを組み合わせた(和漢折衷の)ハイブリッドの記号体系を基盤にしていることを意味し、これが日本人の知的生活にいろんな影響をもたらしているということがもう一点。こうした問題も今後考えていきたい。







2020-02-03

延期になりましたーシンポジウム「近代日本の知識資源システムー図書館、出版、アーカイブの観点から」


このシンポジウムは延期になりました。(2月27日)





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会場が同じ校舎の524教室に変更になりました。(2月14日)

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3月21日(土)午後に公開シンポジウムがあります。

何とも大げさなタイトルと思う方も多いでしょうが、けっこう本気でやろうとしています。なぜこんなことを考えたのかはそのときにお話ししますが、入試改革や公文書の取り扱いで今炙り出されるようになっている問題は、日本の近代化の制度設計にあったある種の偏差がもたらしたものというのが基本的な問題意識です。今後継続して行う共同研究の出発点にあたります。

 今回、日本の出版の事情にお詳しい上智大学の柴野京子さんと日本の政治思想史がご専門で公文書の問題にお詳しい筑波大学中野目徹さんのお二人にも登壇いただき、皆で議論をしたいと思います。

近代日本の知識資源システム

―図書館,出版,アーカイブの観点から―

  • 開催趣旨
  • 幕末期から明治期に時代が移ってゆく中で、政府によって、またそれ以外のルートの影響も受け、日本における知識、それを用いるためのメディア(知識資源)、そしてそれを蓄積、流通させるためのしくみ(知識資源システム)のありようは大きく変わっていった。本シンポジウムでは、(1)明治期になって知識資源システムがどのように変容していき、(2)それが現代に対してどのような影響を与えたのかについて、アーカイブ、出版、そして図書館という3つの分野を中心に見て行く。それぞれの分野のエキスパートとして、アーカイブ:中野目徹、出版:柴野京子、図書館:根本彰の3氏を招き、それぞれの分野について発表をいただき、その後パネルディスカッションを行う。

  • 日時:2020年3月21日(土)14時〜17時(開場13時30分)
  • 場所:慶應義塾大学三田キャンパス 西校舎524教室  https://www.keio.ac.jp/ja/maps/mita.html (キャンパスマップの5番の建物)
  • 参加:無料。ウェブから事前にお申込みください。https://forms.gle/7TtVPitG1K5yV8SQ9
  • 主催:知識資源システム研究会
  • 後援:日本図書館協会,三田図書館・情報学会
  • プログラム
  • 最終講義:根本 彰(慶應義塾大学文学部教授)
    「図書館情報学の新たな射程:知識資源システムの提案」
  • 報告1:柴野京子(上智大学文学部准教授)
  • 報告2:中野目徹(筑波大学人文社会系教授)
<休憩>
  • ディスカッション
司会:河村俊太郎(東京大学大学院教育学研究科准教授)




探究を世界知につなげる:教育学と図書館情報学のあいだ

表題の論文が5月中旬に出版されることになっている。それに参加した感想をここに残しておこう。それは今までにない学術コミュニケーションの経験であったからである。 大学を退職したあとのここ数年間で,かつてならできないような発想で新しいものをやってみようと思った。といってもまったく新しい...