2026-03-27

日本の児童図書館と図書館建築:その概念,歴史,デザイン

2026年3月17日 9:00-11:00 (日本時間) に次のイベントに参加しました。

日時:2026年3月17日 9:00-11:00 (日本時間) ,ボストン会場 2026年3月16日 20:00-22:00 (米国東部夏時間)
場所:オンライン(Zoomウェビナー)
共催:清水建設技術研究所,武庫川女子大学

そこで"Children’s Libraries and Library Architecture in Japan: Evolution of Concepts, History, and Design”としてお話ししたときのスライドとスクリプトの日本語訳をここに示します。また,末尾に他の発表に対するコメントを付け加えておきます。

元のスライドはここにあります。
このプレゼンにあたりお世話になった清水建設技術研究所主任研究員松本隆史さんに御礼申し上げます。

This is the Japanese translation of the presentation, “Children’s Libraries and Library Architecture in Japan: Evolution of Concepts, History, and Design”
Akira Nemoto (Professor Emeritus, The University of Tokyo)
Online Forum "Recontextualizing the Design of the Hiroshima Children's Library 1953,"
17 March 2026 9:00-11:00 (JST) / 16 March 2026 20:00-22:00 (EDT)





他の論者に対するコメント:


建築アーカイブズ

今回,清水建設という大手の建築業の研究所からの依頼で建築アーカイブズの存在について知ることができてたいへんよい経験をした。建築会社は建築物の設計の図面やその模型といった建築に関わる基本的なアーカイブズをもっている。メタデータを公開したり,デジタル化したりすれば非常に有効な文化資源になるものだろう。それがJapan Searchという文化資源のメタデータベースに登録されることによって,共有されることは望ましい。

私自身は図書館の研究をしてきたが,図書館とアーカイブズとの関係やその境界がどこにあるのかについて関心をもっている。日本のこうした文化的機関は西洋の理念だけを移したものが多く,国や地方自治体の図書館やアーカイブズは最低限の機能しかもっていないところが多い。(児童図書館はその最低限の機能に含められていたことは言うまでもない。)欧米では図書館はアーカイブズよりも歴史が長いところが多いから,図書館がアーカイブズの機能を果たしているところも少なくない。今後,図書館とアーカイブズはもっとウィングを拡げて,間にあるそうした資料類を積極的にカヴァーすべきである。そのときに,民間企業が担うべき文化資源についての考え方も決まってくるのではないか。

大学図書館と大学アーカイブ

丹下健三氏のアーカイブコレクションがハーヴァード大学に置かれていることは今回,初めて知った。これについて,東京大学の副学長も務めた社会学者の吉見俊哉氏が,ハーバードのFRANCES LOEB LIBRARYを訪問して,丹下コレクションがハーバードに行ったことは残念であるが,このようなアーカイブズを運営することが東京大学で可能であったかといえばそれは不可能であり,このような形で利用できるようになったことは望ましいと述べている。それはまったくそのとおりだと思う。それは,大学行政における図書館の位置づけと財政規模の違いである。東京大学とハーバード大学の図書館は似ているところがあり,大きな中央図書館とたくさんの部局図書館によって構成されている。しかしながら,東京大学では一部の部局を除いて,個々の図書館が専門職のフルタイムスタッフをもってこうした専門的なコレクションを運用するようなことは不可能である。

第二次トランプ政権になって,連邦政府や州政府から教育文化機関への締め付けが厳しくなっていると聞いている。しかしながら,こうしたアーカイブ的な資料を大事にすることは長い歴史のなかでつくられてきたものである。ハーバード大学が自前の大きなファンドをこういう地味な部分に宛てていることを評価すべきと考える。


県立図書館と市立図書館

最後に,広島の二つの児童図書館について触れておきたい。

日本の公共図書館の発展の中で県立図書館の位置づけは常に揺れていた。アメリカの州立図書館は州の図書館行政の中心としての機能を果たし,児童サービスのような直接的な住民サービスには力を入れていない。

日本では,学校教育だと初等教育・前期中等教育は基礎自治体が担当し,後期中等教育は県が担当するという分担があった。しかし,公共図書館の整備が遅れたために,県立図書館が直接,児童サービスを含めて住民への直接的サービスを行う例も多かった。現在でもそうである。戦後間もない時期に,広島に県と市が児童図書館をつくったのも,広島の復興のために子どもの読書に力を入れるべきだという考え方から来ているものと考えられる。













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