2019-06-03

「今後の学校図書館を導くための学習理論の考察」

昨年の日本図書館情報学会研究大会で発表したものを公表します。


根本彰「今後の学校図書館を導くための学習理論の考察」『2018 年度日本図書館情報学会研究大会発表論文集』琉球大学, 2018 年11 月3 日, p.45-48.

 
抄録
ジョン・デューイの経験主義哲学に基づく新教育が20世紀末には、認知心理学の影響を受けて構成主義的教育学に展開したこと、それが政策的には、折からの新自由主義経済への対応としてOECD/DeSeCoのコンピテンス概念を通じて21世紀の学習理論に発展したことを跡づける。さらに、これらが西欧思想上のロゴス(言語=論理)概念をもとにしていることを述べ、それが言語資料の操作概念を通じて学校図書館の言語力と探究力の二つの学習への対応戦略を導くものになったことについて述べる。

3 件のコメント:

  1. 昨年の国の策定した子供読書活動の推進に関する基本計画は、「読み聞かせなどのお話し会」の記述が多い点について、パブリックコメントしました。知の獲得と感性の育成を分けており、地域社会の関わりは、事実上、後者になっています。両者は、認知と非認知の能力の相互作用により機能すると考える立場からすると、国の方策が良いのかどうかと思います。一部を除くと地域社会のボランティア活動は、「読み聞かせ」中心で完結します。そうすると学校図書館の機能に対する地域の関わりも表層的になります。根本様の「二つの学習への対応戦略」との関係で教えていただければと思います。

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    1. akinem@gmail.com2019年6月10日 17:06

      おっしゃるように、認知的能力と非認知的能力を分けることはできず、読書においてもどちらも必要だということになります。たぶん国では、学校教育の限界を地域やボランティアで補うという戦略をもっていて、子ども読書活動の推進においてもそれを視野に入れているのでしょう。文科省の機構改革で、新しい地域教育推進課に公共図書館と学校図書館の行政施策の両方を含めているのはそれを示しています。それ自体は今後の推移を見たいというところです。

      私が論文で、探究と言語の関係を構造化して、言語が探究の基盤にあるとしているのは、西洋思想と教育の関係を踏まえています。両者の関係は戦後間もない時期からずっと議論されています。戦後の議論の際に、学校図書館は言語力をつけるための読書資料提供の場で、かつ、探究的な学習をする学習資料を提供する場であるから重要なのだという理論的主張ができればよかったと思いますが、当時は、理論も実践も着手されたばかりでその議論するところまでいかないうちに、教育政策の方針転換がなされました。今だったら、理論、実践の両面から議論を詰められると考えています。そのあたりは、今度出す本に書きました。

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  2. 漠然とした私の問に、適切にお答えいただきありがとうございます。やはり「探究」はキーワードになると感じます。ともあれ、今日、社会的にあまり明らかにされませんが、学校図書館の実践が進んできていますので、根本様のように理論を問い続けていただくと、公共図書館の立場の私でも心強く思います。益々、新刊の御著書が楽しみです。

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