2025年度の研究論文として「ジョン‧デューイの探究概念を⼿がかりにした⽣涯学習と図書館の交差点」を公表した。オンラインジャーナルでの提供になる。
この論文は,古巣である東京大学大学院教育学研究科の「生涯学習基盤研究コース」を立ち上げたときの概念を理論的に説明しようとしたものである。戦後教育改革の一環で図書館学研究室は教育行政学という大枠のなかに置かれた。それ自体,あまり落ち着きのよいものではなかったが,その後,21世紀初頭の大学院重点化政策のなかで,生涯学習論という枠のなかで,社会教育研究室と図書館情報学研究室は相互の関係をつくることになった。さしあたって,関係をつくるための容れ物の名称を「生涯学習基盤経営論」という名称にした。
この論文は,当時のコンセプトを現在の地点から理論的に説明するとこうなるのではないかと考察するものである。そこでは,戦後新教育の理論的バックボーンであるジョン・デューイの『学校と社会』(1899,1952年宮原誠一訳)に学校のモデル図があって,学校の中心に図書室(library)と博物室(museum)がある施設として描かれることが出発点になっている。学習をこうした施設がもたらす外部的な知との関係で論じることをデューイ自身はあまりしていなかった。図書館学や博物館学では利用されてきたが,教育学ではデューイの教材論として扱われることが多く,その制度的な展開について教育学者が関心をもつことは少なかったからである。また,哲学の立場からは,デューイはプラグマティズム哲学者として認識されていて,西洋の思想史の系譜においては新しい流派を打ち立てた人とされている。
しかしながら,デューイの学位論文はジョンズ・ホプキンス大学に提出した「カントの心理学」であった。ジョンズ・ホプキンス大学こそ,ドイツの諸大学に導入されていたゼミナールの方法をアメリカに持ち込んだ拠点であった。つまり,実はデューイは大陸哲学の伝統の下で修業時代を送った。彼はヘーゲルの研究もしている。そして,大陸哲学に脈々と流れる人文主義(humanitas)の伝統,そしてそれを支える文献学や考証学の方法はデューイが意識的,無意識的に影響を受けてきたものである。
デューイ『学校と社会』のなかに「書物は経験の代⽤物としては有害なものであるが, 経験を解釈したり拡充したりするうえでは,このうえなく貴重なものである」とある。すべてはここから出発する。本稿では,先にこのブログで翻訳を示したヘンリー・ブリスの『知識組織論と学問体系』にデューイが序文を書いていることや,デューイの強い影響のもとでデンマークの情報学者ビアウア・ヤアランが展開している知識組織論を引き合いに出して,デューイが生涯学習と図書館をつなぐ重要な架け橋になっていることを論じた。
| au: 根本彰 en; Akira Nemoto ti: ジョン‧デューイの探究概念を⼿がかりにした⽣涯学習と図書館の交差点 en:The intersection of lifelong learning and libraries: Based on John Dewey’s concept of inquiry ja : 生涯学習基盤経営研究 en : Studies in Lifelong Learning Infrastructure Management vol. 50, p. 2-13, date 2026-03-31 https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/records/2014753 |
[抄録] ⽣涯学習と図書館を関係付ける根拠を探るために,ジョン・デューイの探究論と図書館情報学の知識論を検討する。ジョン・デューイは独⾃のプラグマティズム哲学を確⽴し,探究共同体においては,参加者が⽣涯を通じて探究⽅法を習得し,それを継続的に洗練させることが,相互成⻑を促し⾃由で知的な活動を⽣み出されることを強調した。その経験と探究の哲学の前提条件として,古典的な⼈⽂学の考え⽅である「⼈⽂主義(humanitas)」があり,これはドキュメントの存在を前提とした⽂献学的側⾯をもつ。ここから,ビアウア・ヤアランのドキュメントを介在させた知識組織論とデューイの探究論との関係性を考察した。
キーワード:ジョン・デューイ,探究,⽣涯学習,ビアウア・ヤアラン,ドキュメント,図書館

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