2021年に『アーカイブの思想』を出したのをきっかけに、アーカイブをテーマにした講演の依頼がいくつかあった。それについては、前に一覧を公表したが、ここでは講演を元にしてもう一度考えをまとめ直したものとして次の3本の論文を挙げておきたい。
1. 根本彰「知のアーカイブ装置としての図書館を考える:ニュートン関係資料について」『短期大学図書館研究』(私立短期大学図書館協議会)40/41合併号 2022.3 p.103-110.(オープン化されていない)
2. 根本彰「知のアーカイブ、歴史のアーカイブ:ニュートン資料を通してみる」『アーカイブズ学研究』(日本アーカイブズ学会)No. 37, 2022.12. p.4-18.(エンバーゴ期間。2024年4月公開予定)
3. 根本彰「知は蓄積可能か:アーカイブを考える」『2022年度極東証券寄付講座 文献学の世界 書物と社会の記憶』慶應義塾大学文学部, 2023.05, p.99-115.(発行元の許諾の下に公開)
最近、発行された冊子に論文3を公開したので、ここに紹介する。これは、慶應義塾大学文学部が極東証券株式会社よりの寄付金によって運営している「文献学の世界」という学部授業でお話ししたものを元に再構成したものである。概要を説明すると、二宮尊徳関係で新しい近世史上の発見があったという新聞報道について出典の扱いの困難性の問題から始まって、知のアーカイブがどのようにしてつくられるのかを西洋の書物と人文学の関係、レファレンスツールのつくられ方、デジタルヒューマニティーズと新文献学といった素材によって論じることで、『アーカイブの思想』の論旨を具体的な素材を元にして整理して示した。デジタルヒューマニティーズによって文献学(philology)の系譜に新しい展開があることについても言及している。
なお、この「文献学の世界」という冊子のシリーズは、カラー印刷でなかなか豪華な装幀のほんづくりをしているのだが、関係機関に配布するだけの限定本で外部にはほとんど知られていない。ここ6年で次のようなテーマがある。
2022年度 書物と社会の記憶 / 安形麻理編(2023.05)
2021年度 テクストと/の空間性 / 徳永聡子編(2022.05)
2020年度 書物に描き出された時/時の中の書物 / 安形麻理編(2021.05)
2019年度 書物と知の組織化 / 安形麻理編(2020.05)
2018年度 書物の境界 / 安形麻理編(2019.05)
2017年度 書物から見る知のネットワーク / 安形麻理編(2018.05)
興味深いテーマが並んでいて、外に出ていないのはもったいないので、担当の安形教授に話していくつかの図書館に寄贈していただくことにした。
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