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2019-08-31

公開シンポジウム 「教育改革のための学校図書館」参加者募集中

このシンポジウムは終了しました。(2020年2月9日)
記録は12月26日づけブログで見られます。
私見は12月27日づけブログで見られます。


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来場者が増えたために会場を変更しました。(10月28日)

会場において、本書を2割引で販売します。(11月15日)


公開シンポジウム 「教育改革のための学校図書館」

 
 
根本彰著『教育改革のための学校図書館』(2019年7月刊、東京大学出版会)で論じられた学校図書館行政の歴史と現状認識、および今後の方向性について、学校教育や学校図書館に関わる論者から意見を述べていただき、論点を明確にして、会場の参加者と討論する。






 日時:2019年11月30日(土)午後2時〜5時
場所:慶應義塾大学三田キャンパス   西校舎527に変しました

アクセス https://www.keio.ac.jp/ja/maps/mita.html
   (キャンパスマップ5番の建物、正門入って左手奥に進んだところ)
参加無料

事前登録制:希望者はここで登録してください

会場において、本書を2割引(税込み4,000円)で販売します。




話題提供者:根本彰(慶應義塾大学文学部教授)

登壇者
稲井達也(日本女子体育大学教授・附属図書館長)
勝野正章(東京大学大学院教育学研究科教授)
高橋恵美子(日本図書館協会学校図書館部会長)
溝上慎一(学校法人桐蔭学園理事長・桐蔭横浜大学特任教授)

司会:河西由美子(鶴見大学文学部ドキュメンテーション学科教授)
スタッフ:吉澤小百合(筑波大学図書館情報メディア研究科博士課程)

*本会合は、日本学術振興会科学研究費補助金(19K12721)の資金援助による。


<話題提供者>

根本彰(慶應義塾大学文学部教授)
 図書館研究を40年行い、今回、学校図書館論をまとめることができた。今後は、これを継続するとともに、『情報リテラシーのための図書館』(2017)以来の近代日本の知識資源管理システムの研究にも取り組む予定である。具体的には「明治政府の知識資源システム」「知の1940年体制論」など。

<登壇者>

稲井達也(日本女子体育大学教授・附属図書館長)
 学校現場と連携し、国語科教育を実践的に研究する。『学校図書館活用デザイン』(学事出版刊)で学校図書館を生かした授業デザインを提案した。都立高校3校と都立小石川中等教育学校(設置準備から従事)で教員25年、その間に都教委指導主事も1年務めた。

勝野正章(東京大学大学院教育学研究科教授)
 教育行政学、学校経営学を専門にしている。子どもにとっての意味というだけでなく、教職員にとっての意味(専門性が育まれ、発揮される条件)という観点からも、学校図書館について考えてみたい。

高橋恵美子(日本図書館協会学校図書館部会長)
 元神奈川県立高校学校司書。定年退職後、東京大学大学院修士課程に入学、現在博士課程に在籍(休学中)。学校司書配置の歴史と実践に関心があり、『学校司書という仕事』(青弓社 2017)にまとめた。

溝上慎一(学校法人桐蔭学園理事長・桐蔭横浜大学特任教授)
 発達心理学研究から始まり、ここ20年ほど高等教育におけるアクティブラーニングやキャリア発達などを論じてきた。しかし発達の観点からは大学生では遅いというデータや論を得て、小学校の学びから中等教育、高大接続、そして仕事・社会へのトランジション論までを研究的・実践的に展開している。


<司会>

河西由美子(鶴見大学文学部ドキュメンテーション学科教授)
 1990年代後半から、メディアセンター化した学校図書館の設計と運営に関わり(京都・同志社国際中高、東京・玉川学園等)2000年より社会人大学院生として情報リテラシー・子どもの情報行動について研究を始める。博士(学際情報学)。2017年度より広島県立広島叡智学園アカデミックアドバイザー(図書館)

2019-08-29

蛭田廣一著『地域資料サービスの実践』の刊行

田廣一著『地域資料サービスの実践』(日本図書館協会)が刊行された。待望の書である。蛭田さんとはすでに20年以上の付き合いになる。蛭田という名字は福島県いわき市の勿来や植田、遠野といった地区に多い。最初、お会いしたときに思わず郷里が一緒ではないですかと聞いてしまった。今回の本の著者紹介にはいわき市出身と明示してあるが、中学生くらいに東京に引っ越したと伺っている。ちなみに、根本は茨城に多く、福島や栃木にも分布している。

小平市図書館の蛭田さんにお会いしたきっかけは、彼が三多摩郷土資料研究会(三郷研)の幹事役をやっていて、この研究会が10年に一度、多摩地域の郷土資料サービスの調査をするのにあたって協力してほしいということであった。私は大学院生時代から、日本図書館協会の図書館の自由に関する調査委員会の委員をしていた。すでに「図書館の自由に関する宣言1979年改訂」と「図書館員の倫理綱領」(1980)が出たあとで、次の課題として個人情報保護とともに情報公開が話題になっていたときだった。山形県金山町で日本で最初の公文書公開条例(1982)が出され、自治体が保持する情報を住民に向けて提供することが図書館でも課題になりかかっていたときだった。私は自治体行政における図書館の位置づけを検証するのに、郷土資料や地方行政資料を手がかりにすればいいと考えて、生意気にも委員会が出していた「図書館と自由」のシリーズの編集を担当することになった。当時、関西の委員だった石塚英二さんや塩見昇さんがバックアップがしてくれたからできたことであった。こうして刊行できたのが、『情報公開制度と図書館の自由』(1987)という本である。この本のことや図書館の行政情報提供については、当ブログ「図書館はオープンガバメントに貢献できるか(2)」に書いたのでそちらも参照していただきたい。

この本に私は「戦後公共図書館と地域資料ーその歴史的素描」という論文を書いた。これはこの分野ではそれまでもその後もあまり書かれていない戦後の郷土資料に関わる実践をまとめたものである。これを見て蛭田さんが連絡をくれたのである。この当時、日野市の実践から始まった資料提供サービス論が公共図書館界で主流になった時期であり、その意味で郷土資料サービスは後ろ向きのサービスと見られがちだったのに対して、私がこれは現代的な意義があるという趣旨の論文を書いたので声を掛けてくださったわけだ。

三郷研は東京の多摩地域(東京都の区部以外の地域)の自治体図書館の郷土資料担当者の繋がりの研修と親睦の場だった。明治百年(1968)あたりをきっかけにして、自治体市編纂の動きや急速に都市化が進められたことに対して地域の歴史や民俗、文化活動を継続するために図書館が果たす役割についての議論があった時期である。「地方の時代」が合言葉だった。それぞれの自治体の中央図書館にはレファレンス担当と一緒だったり、別に担当する場合もあったが、郷土資料担当者は必ずいた。そして互いにノウハウを交換する研究会活動を繰り広げていた。10年に一度の郷土資料サービス調査は現在まで継続されている。

この場で、直接図書館員の活動に触れることができたことは私にとって財産になっている。まもなくつくばの図書館情報大学に就職してアメリカに研究に行くことにしたために、図書館の自由に関する調査委員会は辞めることになったが、三郷研との付き合いはその後もしばらく続いた。そのなかで、『地域資料入門』(1999)の執筆に参加できたこともよい思い出である。この本は、この領域では唯一の指南書として読まれたものである。この本は日図協の「図書館員選書」シリーズの一冊として出たものであるが、このシリーズはまもなく、「図書館実践シリーズ」と名前を変えてすでに40点あまり出ている。前のものから20年後の改訂というのは遅きに失する感じもある。私もいろんな場で、地域資料サービスを学ぶのには『地域資料入門』が最適なのだがすでに古くなっていると触れざるをえず、改訂版がほしいですねと話したりしていた。

なぜ、20年もかかったのか、これについて語ればそれはまた長い物語になる。一言で言えば、バブル崩壊後の図書館界の疲弊がこういう本質的に専門的な領域に出てしまったとしか言いようがない。この間、国立国会図書館(2007)と全国公共図書館協議会(2016)と2回の地域資料サービスに関する調査に参加してわかってきたのは、20世紀のうちは各自治体にいた郷土資料専任担当者が21世紀になると兼務体制に変化したということである。郷土資料や地域資料サービスは通常のサービス体制でも実施することは可能である。図書館サービスは「資料」に依存する。ネット上のものまでとは言わなくとも、当該自治体の資料や地域の企業、商店、学校、NPO、病院などの組織の資料を含めれば、地域では日々膨大な量の資料が発生している。それをどこまで丁寧に声を掛けて収集して組織化し提供するか。『地域資料入門』はそうしたアイディアとそのためのノウハウを提案したものだ。かつての郷土資料はとくに歴史資料に目配りしていたのだが、それが同時代的に発生するものまで含めて地域資料と呼び替えようと提案した。この時期が同時に、自治体経営論に転換する時期と重なったわけであり、これが正規職員の減少を招き、そうした新しい専門的なことに乗り出すことを妨げ、兼務体制による最低限のサービスしかできない状況をつくりだした。

三郷研は『地域資料入門』を刊行した頃に三多摩地域資料研究会(三資研)と名前を変えた。21世紀になってからは、多摩地域であってもこうしたサービスに人を振り向けることができにくくなっている。今回、改訂版をということで蛭田さんに相談したらあのときの執筆者は退職したり、図書館とは別のところに転出したりしていて、結局、唯一図書館に戻って来られていた蛭田さんご自身の単独の著ということになった。彼がいる小平市立図書館はしっかりとこの方面のサービスを継続していたところであり、その実践を踏まえてまとめられたものである。シリーズ名にふさわしいこの本が出せたことをともに歓びたい。今後、この本を出発点としてどれだけ新しい課題に取り組めるかについても検討したいと思っている。