2021-12-01

図書館サービスの経済学のために

3回続いた『図書館雑誌』巻頭の「窓」欄の最後の回(2021年9月号)は、「図書館サービスの経済学のために」です。このテーマは以前から関心をもっていたもので、とくに出版流通との関係を考えるときに避けては通れないものです。

なお、このテーマで年明けに別の記事をアップする予定にしていますので、お楽しみに。



3 件のコメント:

  1. 「日本の図書館 統計と名簿」(日本図書館協会)の作成の中では、貸出冊数についての検討が必要です。貸出冊数は、実は個人貸出を集計するように指示されており、団体貸出は、別の項目に記載します。ここから、図書館は、個人貸出を重視し、読書が個人のものであるという強い意識も読み取れます。そうは言え、団体貸出の中には、図書館の「連結の経済性」や「範囲経済」が含まれるように考えています。経済学の視点から指標の再検討も必要と考えます。

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  2. ありがとうございます。範囲経済でいうと、団体貸出は地域のさまざまな公的なサービス拠点や住民団体の活動と関連をもつので、そこを通して新しい効果を持ちえます。たとえば、病院に団体貸出の資料を提供することで、病院は病院図書室を開設し、図書館は健康医療サービスを行うための関係をつくることができます。ここで得られる効果は団体貸出の数でカウントできるものではないと思われます。経営学ではこういう範囲経済で得られる効果をシナジー効果というようです。公共サービスはすべて何らかのシナジーを伴うのであり、それ全体を評価する必要があるのでしょう。公共サービスの評価について新しい検討をする必要があると考えます。

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  3. ありがとうございます。おっしゃる通り、団体貸出は「成長する有機体」のように、いろいろな形にネットワーク展開できると思います。以前に職員の発案で、包括介護支援センターが行う安否確認の訪問の際に買い物かご程度の入れ物に図書館の蔵書を持参していただく取組をしたことがありました。また、慢性疾患専門病院の入院患者のために定期的に図書を選書して貸出に出向いたこともあります。これらは、直接効果だけではなく、間接効果があるように感じます。介護施設や病院と新しい繋がりができるネットワーク外部性や相互作用などが考えられます。現場の実践の中で取り組まれている図書館も多いと考えます。図書館評価や公共政策との関わりで認知されると良いと思います。

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